の健やかで幸せな暮らしができるまちづくりが実現するといえるのである。 本論文では、インセンティブを活用した健康を促す取り組みとして、現在注目を集めている健康ポイント事業について、成果に関わる要因に焦点をあてて検討し、政策提案をおこなった。 健康ポイント事業は、政府も力を入れている個人の予防・健康づくりのための取り組みの一つであり、高齢化に伴う医療費の拡大を抑制する効果だけでなく、健康づくりを促すことで形成される健幸なまちづくりなど様々な効果が期待される。しかし、実際に各地で行われている事業では、健康ポイント事業に参加することで得られる健康への効果は検証されていないことが分かった。これを受けて、本論文は、健康ポイント事業をとおして健康への効果を高めるための新たな政策が必要であるとの問題提起をおこなった。 次に、健康ポイントに関する先行研究を整理したうえで、本論文の課題を設定した。健康ポイントに関する先行研究は、取り組みに関する研究と事業の活性化に関する研究の二つに大別され、事業の活性化に関する研究では、参加や継続などの重要性について検討された論文がほとんどであった。そのため、本論文では、先行研究ではおこなわれていない、健康ポイント事業の効果についての検証が必要不可欠であると考え、効果を高める要因を分析することを本研究の課題として設定した。 健康ポイント事業参加者の歩数を増加させる要因を明らかにするために、先行研究とインタビュー調査を通して9項目を選定し、独自のアンケート調査とその結果を用いた定量的・定性的分析をおこなった。定量分析では、重回帰分析を採用し、分析の結果、自治体では「住民同士のコミュニティ」が、住民では「広報」が歩数に最も影響力が大きいことが明らかになった。この結果について考察をより深めるために、定性的分析として、自治体にフィードバックをおこない、分析結果や事業の現状について様々な意見交換をおこなった。その結果、自治体の予算に鑑みて、コストを抑えつつ効果的な広報が重要であると健康ポイント事業がもたらす健幸まちづくりの可能性-成果につながる要因の分析-497.おわりに
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