学生懸賞論文集第41号
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■.論証内容(主張の妥当性や論理一貫性)隊員が活動のしづらさを感じる主な要因と考えられる「自治体からの支援・関係性におけるミスマッチ」を分析するため、自治体と隊員の両者に対してアンケート調査を実施し、分析を行っている。調査対象は、活動中の協力隊員のいる愛媛県内の自治体と協力隊員である。分析の結果、制度の「活用初期」「拡充期」「定着期」それぞれの活用段階における課題を抽出し、それを踏まえて必要な支援策を提示している。ただし、本論文が「地域おこし協力隊」の課題として掲げた「自治体からの支援・関係性」という仮説の設定や結論の導出に関しては疑問点が存在する。本論文では、冒頭の研究背景・現状認識として、「移輸出産業」を創出し、消費の拡大や雇用の創出に繫げる「地方の経済基盤の強化」が地方創生にとって最優先に必要であると述べている。そして、「移輸出産業」の創出は、その地域の産業連関を踏まえたものでなければならないほか、その実現には地域住民による自主的な技術開発や地元名産品産業の育成が求められると指摘している。以上のとおり、地域の課題を明示したうえで、それを担える人材として「地域おこし協力隊」を挙げているが、本論文が解決策として提示した「隊員が活動しやすい環境整備」が地域課題解決に繫がっているか疑問が残る。■.論証水準(専門的知識の水準や説明の深味)自治体と隊員とのミスマッチを論証するため、両者にアンケート調査を行い、意欲を感じさせる論文となっていることは評価できるが、いくつかの問題点がある。第一に、制度「活用初期」段階の自治体における隊員回答者が■名しかいないことである。第二に、制度「拡充期」段階の自治体の回答として、■段階評価で質問全項目をオール■と判定するなど、信憑性が疑われることである。第三に、自治体や隊員、関係者に対して実地調査を行っていないことである。これらの要因により、アンケート調査の分析が論証として十分に機能しているか疑問が残る。学生懸賞論文集第■■号30

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