■.論証内容(主張の妥当性や論理一貫性)SDGs未来都市が市町村レベルの自治体で行う施策である一方で、分析に用いているデータは都道府県のものとなっている。したがって、分析対象と使っているデータとのレイヤーが一致していない。例えば、この論文ではA県で全都市が未来都市であれば、A県は未来都市実施県であるとみなしている。一方で、もしB県では最も小さな村のみが未来都市であったとしても、筆者らはB県も未来都市実施県であるとみなしている。このA県とB県は内実が全くことなるレベルの未来都市実施状況であるにもかかわらず、同一の扱いをしてしまうのはこのデータのレイヤーが一致していないことに起因する。また、環境省は市町村レベルの温室効果ガスのデータを過去約■■年分公開している。これを使えばこの不一致は起きなかった。そのため、分析方法に難があり、かつそれは解消できるものである。■.論証水準(専門的知識の水準や説明の深味)分析方法は一般的なパネル分析を行っている。都道府県の個別効果をランダムか固定かをハウスマン検定で識別するのも、手続きとしては妥当である(通常は学部生のレベルでここまでの分析は求められない)。一方で、未来都市に選ばれた自治体(ここでは都道府県)がその後、温室効果ガスが減少しているというロジックを展開しているものの、それは逆因果の可能性もある。つまり、温室効果ガスを削減する取り組みを積極的に行った結果、未来都市に選ばれたという考え方である。この可能性について本文で言及してもらいたかった。また、分析では人口とGDPを同時に説明変数として入れているが、これは多重共線性を引き起こしているかもしれない(両者の相関係数は極めて高い)。VIFを計算するなどして、その可能性のチェックをしたほうがよい。最後に、部門別に推計を行っているが、未来都市設定が機能した(GHG削減につながった)部門もあれば、そうでない部門もある。この違いについての考察もしてほしい。それをしないのであれば、そもそも部門別に推定をする必要がない。学生懸賞論文集第■■号56
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