学生懸賞論文集第41号
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う発展的な課題を導出しており、問題意識は妥当である。また、先行研究は各都道府県の取り組みを対象としているのに対して、本論文は国の政策が都道府県に与える効果を対象として検証していることから、一定の独自性があると推察される。■.論証内容(主張の妥当性や論理一貫性)上記の通り、本研究は都道府県の各種の取り組みが都道府県別業種別集計データで見たCO■排出量の削減に一定程度の効果を上げていることを計量分析に基づき論証している論文に加えて、「SDGs未来都市」に認定されている都市にある中小企業の方がSDGsへの意識が高いことをふまえて、「SDGs未来都市」の選定が与える効果について検証している。論理一貫性に大きな問題はないものの、先行研究の整理から仮説、分析実行に至る間には論理的飛躍がある。「SDGs未来都市」そのものは、企業・産業による環境問題への取り組みに優れている場合だけではなく、社会的公正などを含む一般市民に対する施策に優れている場合でも対象となる。引用されている文献を確認したところ、先行研究で分析対象とする都道府県の取り組みは、取り組みそのものが企業・事業所を対象としているため、その効果の検証を行うために産業レベルの排出量を被説明変数とすることに問題はないと考えられる。しかし、本論文が検証課題として着目する「SDGs未来都市」は、先行研究が着目する取り組みと異なり、その対象が産業部門だけではなく都市全体に及ぶ可能性がある。しかし、この相違をふまえた説明がなされないままに、分析結果にて産業部門全体への効果を推定した効果(表■)と部門別の効果(表■)が記載されている。さらに、分析結果(表■)を見ると、それぞれ部門ごとに推定は独立して行われている点に留意が必要であるが、産業部門小計では有意ではないのに対して、民生部門小計では「SDGs未来都市」の選定が有意に出ている。つまり、この政策はむしろ産業部門よりも、一般市民の生活に関わる部門でのCO■削減に向けた都道府県や自治体の意識の高まり・政策実行に有効である可能性がある。学生懸賞論文集第■■号58

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