96審査員■論評A:論文の形式■.構成力(論文として章節等の体系化)判例を前提とする学説の整理、考察の形をとるならば、まずは判例を紹介した上で、そこから派生した学説に移るのが本来の順序である。あるいは、「ある理論」をよしとして、他の理論と対比するならば、その「ある理論」を中心とした構成とすべきである。いずれの意味でも、大前提となるはずの昭和■年判例の紹介が後回しという構成は齟齬を感じさせる。■.文章表現力(論述の明確さ、漢字・用語の妥当性)特段難解な表現は使用しておらず、文章としては平易を心がけていると評価してよいが、数か所に読解を難しくする、論理不明瞭な個所があることは指摘しておかねばならない。■.準拠性(文献・資料の引用方法)参考文献をまとめて最後部に置き、さらに脚注に著者名だけ引用して記述するというやり方は特殊に思える。また、その必要を特に感じないため(参考文献を■■音順もしくは年代順に整理するという目的があるなら格別、それも行われていない)、かえって混乱を招くようにも思える。B:論文の内容■.テーマの設定(問題意識の独自性・妥当性)論点設定として過大でなく、概ね妥当。ただ、テーマを設定した動機は明示されていない。■.論証内容(主張の妥当性や論理一貫性)昭和中期以降の論文・評釈の代表的なものは労力をかけ、概ね目を通したように思われ、整理をするという観点からは評価に値するが、A■・A■で述べた観点からは分類及び構成が恣意的もしくは無目的的に思える個学生懸賞論文集第■■号
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