■大判昭■・■■・■■刑集■■巻■■■■頁(以下、「昭和■年判決」という。)は、「犯人カ其ノ發見逮捕ヲ免レントスルハ人間ノ至情ナルヲ以テ犯人自身ノ單ナル隱避行爲ハ法律ノ罪トシテ問フ所ニ非ス所謂防禦ノ自由ニ屬ス」として、判例が、犯人に対する犯人蔵匿・隠避罪の成立を否定することを明らかにした。なお、最高裁判所は、犯人に対する犯人蔵匿・隠避罪の成否について言及していないが、昭和■年判決以降の大審院・最高裁判例において「犯人に対する犯人蔵匿・隠避罪の成否」が争点となったものは確認できないため、最高裁も大審院と同様に、犯人に対する犯人蔵匿・隠避罪の成立を否定する立場に立っていると解される。■学説の多くは、犯人による自己蔵匿・隠避行為は期待可能性が不存在であることに加え、刑法■■■条は、犯人自身を行為主体に含めていないため不可罰であると説明する(山口(■■■■)■■■頁、松原(■■■■)■■■頁、高橋(■■■■)■■■頁、伊藤(■■■■)■■■頁、西田(■■■■)■■■頁、佐久間(■■■■)■■■頁、岡野(■■■■)■■■頁、堀内(■■■■)■■■頁ほか)。■最決令■・■・■集刑■■■号■■頁(以下、「令和■年決定」という。)は法廷意見において、犯人に対する犯人蔵匿・隠避教唆罪の成立を肯定する一方で、成立を否定する山口裁判官の反対意見(以下、「山口意見」という。)が存在している。また、本決定に関する判例評釈として、前田(■■■■)■−■頁等があり、この他にも松本(■■■■)■■−■■頁が、近時において本問題の検討を行っている。■松本准教授は、本問題について「なおも整理・検討を要する点が残されている。」と指摘されてい66刑法学における問題のひとつに、「犯人に対する犯人蔵匿・隠避教唆罪の成否」がある。すなわち、犯人蔵匿・隠避罪(刑法■■■条)について学説・判例では、「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者」(犯人)が、自己を蔵匿・隠避しても、犯人は本罪によって処罰されないと解されているのであるが■、■、犯人が他人を用いて自己を蔵匿・隠避させた場合に、「犯人に対して犯人蔵匿・隠避教唆罪は成立するのか」という問題である。本問題については、従来から学説・判例ともに様々な意見や見解が主張されてきた一方で、本問題に関する整理についてはあまり行われて来なかったように思われる。また、本問題については、近時の学説・判例においても議論がなされているため■、現在においても整理すべき点が多く残されていると解される■。したがって、犯人に対する犯人蔵匿・隠避教唆罪の成否について今後の研究を行うために、本問題に関する従前の議論状況や近時の学説・判例を整理することについても、十分意義があると考える。なお、期待可能性の不存在による責任阻却と説明したものとして、日髙(■■■■)■■■頁、大谷(■■■■)■■■頁、山中(■■■■)■■■頁、三原(■■■■)■■■頁。刑法■■■条の行為主体から除外されているとする構成要件不該当と説明したものとして、松宮(■■■■)■■■頁、井田(■■■■)■■■頁、川端(■■■■)■■■頁、大塚(■■■■)■■■頁、福田(■■■■)■■■頁、団藤(■■■■)■■頁。る(松本(■■■■)■■頁)。学生懸賞論文集第■■号第■章本稿の目的
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