85■■必要的共犯関係については、前章(第■章)第■節第■款を参照。題を残すであろう。」と指摘した。そして、谷口意見は、「私としては、積極説に未だ十分な根拠を見出すことができないのである。」として、このような成立を肯定する学説・判例の立場を批判したのである。つぎに、谷口意見は、私見として「思うに、正犯として不可罰な行為は、共犯としてした場合であっても原則として不可罰である。」として、犯人に対する犯人蔵匿・隠避教唆罪の成立について否定的な立場を表明した。このような立場を採る理由について、本意見は、「刑法一〇三条所定の犯人蔵匿・隠避の罪は、行為定型として蔵匿し・隠避させる者と蔵匿・隠避される犯人の両者を必要な成立要件としている。」とし、「犯人が単独で、自ら逃げ隠れする場合までを、ここにいう犯人蔵匿・隠避にいれて考えることは、実に用語としても正当ではあるまい。」と指摘した。また、谷口意見は「同罪が、蔵匿し隠避させる者と蔵匿・隠避される犯人の両者を関与形態として予定し、しかも同罪が成立するについては、後者から前者への働きかけをするのが通常の事態というべきであり、立法事実としても当然そのような事態を考えたであろうと思われるのに、刑法は前者についてのみ処罰規定を置いているのである。」として、学説における必要的共犯関係と同様の見解を展開した■■。すなわち、谷口意見は、必要的共犯関係を理由として犯人に対する犯人蔵匿・隠避教唆罪の成立を否定したと考えられる。した唯一の下級審判例である。まず、平成■年大阪地裁判決は、「判例は、旧法下以来一貫して、犯人が身代り犯人を立てて自首させる行為に犯人隠避教唆罪が成立するとしている。犯人が犯人隠避を教唆した場合には『防禦ノ濫用』があるというのが、その理由である」として、判例が昭和■年判決から、防御の濫用を根拠に犯人蔵匿・隠避教唆罪の成立を肯定していることを確認した上で、このような判例の立場を「自分でやっても犯罪ではないが、他人を巻き込めば犯罪になるというのである。」と分析した。平成■年大阪地裁判決の分析によれば、昭和■年判決にお第■款平成■年大阪地裁判決平成■年大阪地裁判決は、犯人に対する犯人蔵匿・隠避教唆罪の成立を否定犯人に対する犯人蔵匿・隠避教唆罪の成否に関する一考察−学説・判例における見解及び状況等の整理を中心として−
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