海外留学ガイドブック2019-2020
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松山大学 国際センター  センター長 穴田 浩一 約150年前、明治政府は、近代化を推し進める一環として、多くの留学生を欧米諸国に派遣しました。留学生たちは、様々な分野で当時の最先端の知識を身に付け、帰国後は、それぞれの分野で国家や社会の近代化に貢献しました。その一例として、法律学を学んだ留学生は、明治政府の中枢で近代的な法制度を整備し、欧米諸国に匹敵する国家体制を作り上げました。新しい知識は、社会全体を発展させる原動力となるものです。 また現在、貿易は世界規模に拡大し、商品や人、情報が国境を越えて移動することがごく日常的なこととなりました。しかし交流の拡大は、時として衝突を生み出し、場合によっては国家間の武力紛争にまでつながることがあります。現在の世界も、決して平穏でないことは、毎日のニュースが報道するところです。しかし過去、多くの戦争を経験した人類が、お互いを知り、違いを認め合い、その上で共通のルールを作り、共存する方法を見つけ出そうとしているのも事実です。国連は、その代表的なものといえるのではないでしょうか。遠回りのようですが、人と人との交流が相互の信頼を生み、その個人的な信頼関係を国家間の信頼関係につなげていくことが、求められていると言えます。 さて、この冊子を手にした皆さんは、人一倍、外国や留学に対する関心を持ってくれていることと思います。関心を持ったきっかけは、人それぞれかもしれません。しかし動機はどうであれ、海外での生活は、これまでなかった経験を皆さんにもたらすことでしょう。実際に触れなければ知ることのできない、その国の人たちの考え方、文化、歴史等に接することは貴重な経験であり、その経験は、その後の人生に大いに役立つことでしょう。また留学は、複数の視点、客観的なものの見方を教えてくれます。現代社会においては、マスメディアやインターネットに多くの情報が溢れていますが、それらの中には誤ったものや偏見に満ちたものも少なくありません。外国の現実を自分の目で見ること、外国から日本を見ることは、現代社会で求められている、多くの情報の中から本質を見抜き、冷静かつ客観的な判断を下す力を養ってくれることでしょう。 外国から得られた新しい知識が社会を活性化させることは、今も昔も変わりありません。そして冷静かつ客観的な視点は、誤解や一方的な見方が原因となる紛争を予防し、相互理解を深めることにつながります。松山大学の海外研修プログラムをステップとして、これからの社会、そして世界を作っていく皆さんが大きく成長されることを、期待しています。巻 頭 言

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