Creation-158号
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実務を通じて学問への学問への探究心を深めていく 過去5年間、多くの学長賞受賞者を輩出していることで知られる溝上ゼミ。「ゼミで特別なことをしているわけではなく、学生が頑張ってくれているんです。私は学生が互いに刺激し合える環境をつくっているだけ。強いて言えば、みんなとしっかりコミュニケーションをとって、何でも話せる雰囲気づくりを心がけています」と話す溝上先生。実際、溝上先生の研究室には四六時中学生がやって来ており、簿記検定の直前などは、研究室で勉強をする学生でいっぱいになることもあるそう。休日返上で学生と向き合うことも少なくない。 また、溝上先生が教えている財務会計は企業経営等には必要不可欠だが、学生には無縁の世界だ。そこで少しでも興味を持ってもらいたいと取り組んでいるのが、学生による会社経営。「と言っても、本物の会社を経営するのは不可能なので、まず学生たちが架空の株式会社を設立。この会社が地元商店街で開かれる夏祭りや、学園祭にかき氷やポップコーンの屋台を出店します。そうすると仕入や販売を行うので必ず帳簿をつけることが必要になります。授業で帳簿の仕組みを学ぶことも必要ですが、実際の経済活動をすることにより、よりリアルに学んでもらえるのではないかと考えています。学生たちは原価の計算まで行っており、かき氷一つにどれだけコストがかかるかを綿密に計算しています」。 決して利益を目的とした活動ではないが、最後には全員で株主総会を行い、利益の処分も学生自身に考えてもらうのだと言う。実務を通じて学問への探究心を深めていく  これぞまさしく校訓『三実主義』の神髄と言えるだろう。社会との接点をつくりコミュニケーション能力を育成 学生による会社経営は、単に帳簿の仕組を理解する以上の効果も生み出している。その最たるものが他者とのコミュニケーション能力の育成だ。出店にあたっては、学生たちが企画書をつくり、商店街関係者の方々と打ち合わせを実施。また自分たちでチラシをつくり、効果的な配布方法や演出についても模索している。 「学生時代に社会との接点をたくさん持って欲しいと考えています。商店街の方との打ち合わせには私も立ち会いましたが、たとえば電源をひく方法やそれにかかる費用など、学生は考えていなかったんですね。それら実務上必要となるさまざまなことを教えて頂くことによって、身を持って学んでいくというわけです」。 このほか、社会との接点を持つための機会になればと、地元の企業経営者に学生からのインタビューを受けて頂くという取り組みも行った。学生との距離をつくらない溝上先生を慕って、卒業後に学校を訪ねてくるOBやOGも多いそうだが、タイミングが合えばゼミで彼らに話をしてもらうこともあるそう。社会で頑張る先輩たちのリアルな本音に、学生たちは熱心に聞き入る。 「いろいろ目先の変わったことをしているようですが、大学生にとって一番大切なのは真摯に勉学に取り組むことだと思っています。勉強をきちんとやるのは大前提であり、会社経営や経営者のお話を聞くなどの取り組みはあくまでもおまけの部分なんですね。ただ、基盤となる勉強に興味を持ってもらうためには、このおまけが大きな効果を発揮することは間違いない。幸いなことに、私自身、体力も時間もありますから、とことん学生と向き合って、有意義な学生生活を送れるようサポートしていきたいと思っています」。その姿勢に教育の原点が存在しているに違いない。学問に興味を持たせ社会との接点をつくる時間の許す限り学生としっかり向かい合う。経営学部准教授溝上 達也さん研究室のボードにはギッシリと在学生やOBの写真が並ぶ。ゼミ終了後や試験前には特に多くの学生が研究室を訪れ、時間を惜しまない意見交換がおこなわれている。山口県出身、一橋大学商学部卒業後、同大学大学院へ。博士(商学)。9年前に講師として松山大学に赴任し、後に准教授となる。

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