Creation-159号
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先生と学生の距離は非常に近かった。私たちも何かといっては研究室におじゃまして、床磨きなんかをしていましたね。 日本全体がそれほど豊かではない時代です。自分も周りの友人も貧乏学生でした。家賃3000円の四畳半一間を間借りして、ちょっと高い参考書ひとつ買うにもアルバイトです。夏休みなんかは稼ぎ時です(笑)。そうした中で、私も友人も「親に負担をかけないように、早く卒業して一人前になりたい」と強く思っていました。学校全体にそういう雰囲気があったように思います。みんな、独立心が旺盛だったんですね。そもそも松山高商は実務の学校ですから、学生はみんな社会に出てからのことを見据えて学んでいたんじゃないんでしょうか。言葉ではなく、校風といいますか、学校全体が三実主義を実践していたように思います。そういう時代背景がありましたからね、今の学生さんが考える三実主義とはちょっと違うかもしれません。そうした気概が、松山大学の校風だったことを知ってほしいですね。学校、先輩の方々のおかげで、就職率も良かったんですよ。時代、時代のやりがいを見つけることが肝要 私は昭和43年に卒業して四国ガスに入社しすぐに高知支店に配属されました。街外れはまだ舗装もされていないでこぼこ道で、当時の社屋も大学の木造校舎に負けず劣らずの古い建物。ただ、日本の経済は段々右肩上がりに伸びていって、やること、やることがすべて形になるんです。頑張って営業して、「お客さん、都市ガスどうですか」と言ったら「おぉ、引いてやる。早よおせい」と即答。街が大きくなっていって、みんなが大きくなっていく。良くしていこう、どんどん伸びようという時代になってきましたからね。やはり面白さはありました。反面、今はとても難しい時代です。経済面では非常に不安定ですし、日本全体がなにか、どんよりとした感じがします。でも、今の時代には今のやりがいがあるのではないでしょうか。たとえば冒頭に述べましたように、今の時代は環境への配慮なくしてはどんな事業も成り立ちません。そこで、時代は変わろうとも、常に社会の要望に応えよう、今、求められる技術やサービスや情報を提供していこうという気持ちを実践していければ、決して悲観することはないと思っています。地域貢献の本質は、時代が変わっても一緒です。地域とともに生きて、地域と一緒に伸びていく。その気持ちが大切なのだと思います。 そんな中、松山大学の後輩たちにはバイタリティーを持った積極的な人間になって欲しいと思います。言い替えれば前向きな気持ち。言い方は悪いですが、若い時は少々羽目をはずしてもいい、頭をたたかれるぐらいで丁度いいんです。若気の至りで「しもた」「間違うた」と思ったら反省してね。それでもめげずに頑張っていくような人が私は好きですね。 とはいえ、本分をわきまえないといけないとも思っています。学生の本分は勉強ですからね。ある程度の基礎学力は持っていなければいけないと思いますよ。基礎的なところを学校でやって、あとはプラスα、パソコンでも料理でも文章を書くのでもいい。いろんなアルバイトをして、いろんな世間のことを知りながら自分の経験を増やしていくのもいい。スポーツに情熱を傾けるのも大いに結構。とにかく、人としての自分の能力を伸ばして欲しい。ただ、しつこいようですが、幹になる部分、基礎学力だけはきちんとやっておかないといけないでしょう。幹が無いと、風が吹いたらバタっと倒れるかもしれませんからね(笑)。バイタリティーを持って「さすが松大」と呼ばれる人に 今、当社には松山大学の出身者は46名います。当社の場合、やはり地域密着型の企業ですから、地元からの採用が多いのですが、松山大学の卒業生にはたくさん来て頂いています。中には最初にお話しした天然ガスの転換事業に携わっている人たちもたくさんいます。彼らにも、今、現役の学生さんにも、世の中に出てから「さすが松大だなあ」と言われるような人材になって欲しい。私たちは、学生時代には「出てからが勝負」だと思っていました。そして卒業して働きだしてからも「他の学校の者に負けてたまるか」という思いがありました。母校というのは「母」ですからね。学生時代はお母さんのお腹の中で、栄養をもらって、温められて大事にされているんです。勝負はそこから出てから、社会に出てからなんです。だから今のうちに、少しずつ心構えをつくって欲しいですね。 幸いなことに、松山大学には三実主義という大変に素晴らしい考え方がある。まだ、ピンとこないかもしれませんが、三実主義の中には社会を生き抜いていくための真理があるんです。何か迷った時、行き詰まった時、「真実」「忠実」「実用」という物差しで自分の行動や考え方を計ってみてください。そして「社会に役立っているかどうか」を常に自分に問いかけてみてください。そういう習慣を身につければ、必ずや「さすが松大」と言われる人間になることができると確信しています。地域を、日本を、興す “人材”たち

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