Creation-160号
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新田長次郎翁らが目指した松山大学の「志」 まず考えたいのは、現在「三実主義」を皆がどのように捉えているかということ。これは松山大学の建学の精神・教育理念であり、理想とするべき教育の姿なのですが、本来「私立」大学には創設者がいて「こういう人材を育てたい」という創設者の理想があり、その理想を教育に反映させて、優れた人材を社会に送り出そうという使命があります。そういった意味では私立大学には全て建学の精神、教育理念というのが存在します。ある意味では、私立大学は「志」を立てる「志立大学」でもあるわけです。三実主義は松山大学の建学の精神であり、教育理念であり、本学の「志」です。 松山大学の前身・松山高等商業学校を創設したのは新田長次郎翁という方で、ビジネス活動を通してたくさん資産を蓄えられた方です。その資産を教育に役立てようという考えをお持ちだったんですね。私は自校史教育で新田長次郎翁を調べて行く中で、翁は教育により優れた人材を育てて社会に貢献しようとの思いを強くもっておられた方で、大阪での貧しい子供たちのための有隣尋常小学校の開校などと合わせ考えると、社会改良的な考えをお持ちの方だったのではないかと思い至りました。 本学は新田長次郎翁を中心に、平民宰相・原敬と司法省法学校以来、生涯にわたり交流をもった外交官・加藤恒忠、かつて市立大阪高等商業学校(現・大阪市立大学)校長であった加藤彰廉の三人の力で誕生します。松山高商の初代校長になる加藤彰廉先生は、前職の北予中学(現・愛媛県立松山北高等学校)校長時代にすでに三実主義にあたる考えを持っておられたようで、本学に来られて真実・忠実・実用という校訓・三実主義を唱えられ、本学の建学の精神・教育理念になっていきます。 こうして振り返ると松山大学は「企業家」「外交官」「教育者」という実に興味つきない人物たちによってつくられており、そこに大きな魅力や誇りを感じています。 産業界から寄せられる「学生の質の向上」への要望 こうした歴史を踏まえて、今、私たちに課せられた使命は、やはり三実主義を身につけた人材を自由な空間のキャンパスの中で育てていくことだと考えています。 これまでに本学は、産業界で活躍する非常に優秀な人材を数多く輩出してきました。今「大学教育」そのものが社会の中で大きく様変わりしており、かつて専門教育の重視を求めていた産業界の大学に対する要望は非常にシビアで、本学だけが無関係ということはできません。これは少し前のことですが、経団連は「大学教育の充実を図って学力向上に努める必要がある。大学は本当の能力を備えた学生を社会に送り出す責任がある」という指摘をしているんですね。また、経済同友会は「哲学や歴史、文学、芸術などの教養教育をもっと重視する必要がある。教養教育を必修化して、その上で専門教育を充実させるべき」という提言をしています。これは言い換えれば大学教育に対する危機感の表れと理解して、私たち大学側はそれにきちんと応えていかなくてはいけないと考えています。 大学全入化・入試の多様化の時代にあって「出口管理」が問われています。卒業までに身につけなければならない能力「学士力」の問題です。力 副学長・経営学部長 平田 桂一氏学生自身に意欲がなくては理想とする教育は行えない。もっと社会に関心を持ち、学ぶ意欲を身につけて欲しい。

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