Creation-160号
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大学で学んだ人間関係が修行で役立つ 創業34年、松山で京料理の伝統を守りながら、選び抜いた素材を使った最上の料理を作り続ける「京風一品料理きよみず」。その2代目として毎日料理に真剣勝負を挑んでいるのが森脇さんだ。料理屋に生まれ育ち、幼い頃から将来は家業を継いで料理人になること以外考えたことがなかったという。「3、4歳の頃から職人さんが包丁を使っているのをみて、やってみたい、と。実際に触って手を切ることもあったりして(笑)」。進学したのは、大学という一つの社会で「生き方」を経験したかったからだそう。「卒業してすぐ京都の老舗旅館に修行に入ったんですが、厳しい職人の世界に順応できたのはサークルや部活の中で学んだ人間関係のおかげだと思っています」。4年間の修行の後「きよみず」の店舗改装をきっかけに帰松、現在は料理の味付けや調理場の全体指揮を担当している。「みんながバラバラに仕事をしていると全然力を活かせない。スタッフの人数以上の仕事がこなせたり、より緻密な作業が可能になったりというのは、自分の取りまとめの力量次第だと思っています。人の力を活かすのは難しいですね」。食べる人の心に滲みる料理を作りたい 料理の世界は奥が深い。素材、調理法、盛りつけ、その人に合った味と、もてなしの呼吸。その全てが一番高い到達点で一致したものが最高の料理。お客様には、その最高の料理を食べて欲しいというのが森脇さんの強い思いだ。「自分がいいと思っても評価をするのはお客さん。味はもちろんお出しするタイミング一つにしても常に不安です。だからこそ一生懸命にやるんだろうし。もう少しこうしたらよかったと思うことがあると、やはり凄く後悔しますね」。京都から帰った当時は戸惑ったこともあったそうだ。例えば素材の下処理の仕方など修業先と微妙に違う、と小さなストレスを感じたことも。しかし「今は期待に応えたいという気持ちでいっぱい。その気持ちが、お客さんを幸せにするし自分も幸せになれる。これこそが、この仕事の素晴しさだと思います。自分の味をこの店で広めながら新しいお客さんを作ること、そして伝統文化としての京料理を若い子たちに伝えていくのも大切な役目だと思っています」と語る。森脇さんの料理はこれからどれだけの人を幸せにしていくのだろうか、楽しみでならない。松大な人京風一品料理 きよみず取締役森脇 巧さん(1996年3月 人文学部 社会学科卒)後輩へのアドバイス 今になって、あの授業をもっと真剣に聞いておけばよかったとか、この分野すごく興味があるけど確か大学の授業でやってたな、ということがあります。もったいない話ですが…。皆さんには何か一つでいい、自分の興味のあるものを突き詰め、そして常に向上心を持っていて欲しいです。絶対に、社会に出て役に立ちますから。お客さんには最高の状態で料理を食べて欲しい最高の素材と確かな技術をもてなす心で供したい学生時代はサークル仲間とキャンプも楽しんだ厳しい世界に飛び込む意志を持って迎えた卒業余暇を見つけて、自ら茶の道にも触れて幅を拡げた

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