Creation-161号
8/20

松大な人1 私は広島県尾道市因島の生まれで、中学では野球をやっていました。地元では大学へ進学する子は因島高校に進学していました。私は生家が豊かではなく、大学には行かせてもらえないことが分かっていたので、就職に有利な尾道商業高校に進学しました。卒業後は就職し、1年半は一生懸命お金を貯めて、半年ほど受験勉強をし、ようやく大学進学を果たしました。 私の専門である「ライフサイクル・コスティング」は、アメリカの国防総省がベトナム戦争時代に開発した原価計算システムが始まりであるといわれています。その考え方は現在様々な分野で応用されています。例えば、物を買う際、その価格を購入後のランニングコストや廃棄コストも考慮した上で、どれを選ぶのがよいかを判断していくという形で取り入れられています。私は大学院からこの研究を始めたのですが、ライフサイクル・コスティングを環境会計や環境管理会計と結びつけた研究は非常に華々しいのに対して、私が取り組んでいる「ライフサイクル・コスト防衛調達制度」などに結びつけた研究はあまりやりたがる人がいません。月見草みたいなもんです(笑)。まあ、私自身、かなりマニアックな性格ですから、資料をひもといてコツコツと研究するのが性に合っていたのでしょうか。お蔭様で平成15年には研究を一冊の本にまとめることができ、それがきっかけで各方面からの問合せも増え、研究者として大きな喜びとやりがいを感じています。 今、しみじみと振り返ると、私の基礎をつくってくれたのは、恩師に出会った大学時代です。大学教授になるという目標を持って、奨学金を頂きながら、アルバイトもやり、とにかく一生懸命勉強しました。「ハングリー・スタディー」とでもいうのでしょうか。生きるために、職を得るために勉強する…という日々でしたね。 現在62歳ですが、研究に対する意欲はまだまだ尽きることはありません。また、スポーツもテニスを続けていますし、人と話すことも大好き。そうした好奇心と行動力が私の原動力なのでしょう。生きるために、職を得るために勉強し、自分がとことん打ち込める研究に出逢い、充実した人生を送っています。略 歴広島県尾道市因島生まれ1971年/広島商科大学(現広島修道大学)商学部卒業1975年/広島大学大学院経済学研究科修士課程修了1978年/神戸大学大学院経営学研究科博士課程単位取得退学1987年/松山商科大学(現松山大学)経営学部教授専 門ライフサイクル・コスティング授業担当原価計算論簿記原理経営学部岡野 憲治 教授Okano Kenji資料が積み上げられた研究室。一見すると雑然としているようだが、岡野先生はどこに何があるかをしっかりと把握しているそう。

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る