Creation-162号
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 父の仕事の関係で、小・中学校は転校が多く、なかなか友人ができませんでした。「自分を認めてもらうには勉強しかない」と思い、東大入学を目標にひたすら勉強していました。その反動でしょうか、念願叶って東大に入ってからは、友人もでき、ヒッチハイクで広島にいるGFに会いにいくなど、そこそこ青春を謳歌しました。 縁合って松山大学に来ることができ、数年前に人文学部の学部長に就任したのですが、その頃から少子化による志願者減が顕わになってきていました。社会学科も例外ではなかったため、学科の人気を取り戻すには教育の改革・改善が最優先であると考えました。その方【松大な人3】教育の原点は「目の前の学生から」まずは目の前の学生たちをよく観察し、彼らに必要な教育を探求、開発、導入教 授法として普通考えるのは、今日本や世界で最も優れた社会学教育を持ってくることですが、そういうものは往々にして教師の独りよがりの押しつけになることがあります。そこで「目の前の学生から出発しよう!」を基本原則に、普段付き合っている学生たちをよく観察し、彼らに必要で適切な教育内容や方法を探求、開発、導入することを決意。具体的には今の学生に必要な科目を新設することにしたのです。その一例が、学習技法系の科目である「論文・レポートの書き方」。大学ではレポート・論文を書く機会が多いのですが、その書き方を教えていないので学生が困っていたからです。結果的に学生に歓迎され、人文学部生全員が受講する「日本語演習」に発展しました。このほか、自己表現系の科目「アート・デザイン表現」「身体表現(ダンス)」、達成体験系の科目「歩き遍路」、プロジェクト(協同的事業達成)系の科目「市民企業論」などが新たに開講されました。同時に担当科目の改善として、例えば授業内でサークルをつくってもらうことで、社会集団作りを体験をしてもらっています。こうした取り組みの結果「授業時間があっという間に過ぎた」という学生が増え、授業中の私語もほとんどありません。まず目の前にいる学生に向き合うということの大切さは、子ども時代に人付き合いが上手にできなかった自分だからこそ気づけたのだと痛感しています。人文学部社会学科国崎 敬一 教授Kunisaki Keiichi略 歴福岡県大牟田市生まれ1972年/東京大学教養学部(アメリカ科)     卒業1978年/東京大学大学院社会学研究科     博士課程修了1979年/松山商科大学(現松山大学) 人文学部講師、 以後助教授を経て教授2000年/人文学部長専 門ネットワーク論、対面的コミュニケーション授業担当社会学、経済社会学達成体験学習・歩き遍路

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