Creation-162号
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教育のなかにある、“実践”裁判員制度について具体的なイメージを持つ 2009年から「裁判員制度」が始まりました。それに先駆けて昨年度後期、法学部では週一回(90分)で全15回の公開講座「国民の司法参加」を実施しました。その背景には裁判員制度に関して、学生や市民の方に明確なイメージを持って欲しいという意図がありました。主な内容は、まず法曹三者(裁判官・検察官・弁護士)の方に来て戴き、裁判員制度の概略などについて講義して戴いて理解を深めていったほか、裁判所や検察庁を見学しました。公開講座にしたのは、同制度に対して、市民の関心が高いことを鑑みたからです。 毎回学生100名前後、市民数名が参加した講座ですが、写真に写っているのは松山地方裁判所見学の風景です。実際に裁判員裁判が実施される41号法廷に入れて戴き、受講者は裁判官や裁判員、検察官、被告人や弁護人の席に着いたりもしました。その後、刑事部統括裁判官のお話を聞き、裁判員制度広報用映画「審理」を視聴。受講生による討論が行われました。 この松山地裁の見学は、学生から大変好評を得ました。「ドラマや映画の世界である法廷を実際に見ることで、裁判員制度に対する興味が高まった」などの声が多数寄せられています。また講座全体についても普段の講義とは違った興味を喚起することができたようです。質疑応答では熱心な質問が出て、日常生活ではなかなか接点を持つことができない実務家とディスカッションしたことは予想以上の効果が得られました。その一例として、学生たちは「実務法曹(裁判官・検察官・弁護士)というのは自分たちとは違う世界で生きている」という印象をもっていましたが「司法試験に合格している以外は自分たちと同じ人間なのだ」ということに気づけたことがあげられます。これにより自分たちも目標を持ち、努力すれば「なりたい自分になれる」と自信を深めたようです。つまり、この講義が、将来について真剣に考え、行動しようと決意する契機となったのです。「実践的な講義」により、自分と法律の関係を再認識 私自身の本講座に対する感想としては「実践的な講義」により、法律を具体的かつリアルに学ぶ事ができたので、非常に大きな効果があったと思っています。一方で、真剣に考える学生たちの姿勢に改めて教育の原点をみたような気がしました。講義を受ける前、学生たちは「法律」が自分たちの日常からかけ離れた世界であると感じていました。たとえば裁判員制度についても「何となく負担」とか、反対に興味本位で「面白そう」という程度に考えていたようですが、「社会全体で取り組まなければならないこと」で「自分自身もその社会の一員なのだ」と認識できたようです。今後は、その認識を入り口に、法的な考え方について学生とともに掘り下げていきたいと考えています。 そもそも法学部というのは、法律を学ぶところです。そして、法律を学んだと言えるためには、自分自身の考え方を突き詰め、なぜそういう風に考えるのかをしっかりと理解し、それを相手に説明できるようにしなければなりません。そのため学生には常日頃から「あなたの意見はどうか」(意見)、「なぜそう思うか」(理由)についてセットで答えてもらうようにしています。また、社会人となってからは、内輪だけでなく、外部の方にも臆することなく話すことが求められます。そこで私のゼミでは、年に一回、他大学と共同で刑事法研究会を実施しており、法律の理論と実践との関係について実感してもらっています。自分と法律との関係を再認識し社会の一員として法にどう関わるか。そのきっかけとなった公開講座「国民の司法参加」。法学部明照 博章准教授松山地方裁判所のご協力で実現した裁判所見学。講座全体を通じて裁判官・検察官・弁護士からそれぞれ直接指導をうけるという希有な体験を得た。

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