Creation-163号
4/20

徹底した実態調査で有用なアンケートを作成 「せっかくやるのなら自分の興味のあることを」との思いから、私のゼミでは学生が「やりたい!」と思ったことを研究させるように配慮しています。これは3、4年次の2年間取り組むものなので「学生の自主性を重んじたい」との意向で、誰と組んで、何をやるかから学生に任せているんです。そんな中、昨年3年次生だった坂本梨沙さんと大東希さんから「松山市の放置自転車について調査・研究したい」という申し出がありました。 市内中心部の放置自転車については、松山市でも関心の高い社会問題の一つ。自転車は学生たちにとって非常に身近な交通手段でもあり、自分たちが放置自転車を引き起こしてしまう当事者になる可能性もあれば、反対に放置自転車によって迷惑を被る側になってしまうこともあります。松山市では大街道周辺にサイクルガイド(案内人)を配置し、放置自転車やアーケード内における自転車通行に対する対策を行っています。以前に比べると随分と改善したという声が聞かれる一方で、いたちごっこのような側面もあり、全面的な解決には至っていません。そこで2人は「なぜ放置自転車が発生してしまうのか」を調べることで、根本的な解決の一助にしたいと考えたんですね。そこで、松山大学の学生にアンケート調査を実施することになったのですが、私からは「とにもかくにも実態調査を徹底して行うこと」とアドバイス。と言いますのも、学生に「どうしたらいいか」を訊くよりも「実際にどのように行動しているか」を訊いた方が、問題解決のヒントにつながるからです。 質問の仕方によっても、情報の精度が全く違ってきますから、調査票は、他のゼミ生の意見も取り入れつつ、手間ひまをかけて作成してもらいました。また、調査票作成に先がけて、2人は、昨夏、サイクルガイドのお手伝いもさせて頂きました。これがすごく大変だったらしくて、2人は、駐輪場の利用を呼びかけても無視されたり、反論されたりして、随分とへこんでいましたね(笑)。でも、現場を見たことで、調査の方向性も見えてきたし、その体験談を聞いたゼミ生たちの意識向上にもつながりました。先輩と後輩の交流にも「先輩の研究を引き継ごう」そんな気運も高まっていく 次にアンケート調査ではサンプル数もある程度は確保しなくてはなりません。2人は私の予想以上に頑張ってくれ、結果的には約380名の松山大学の学生から回答を得ました。「サイクルガイドについてどう思うか」「普段はどこに駐輪しているか」「中心市街地では自転車を押しているか」「どのくらいの頻度で中心市街地に行くか」などの質問項目に答えてもらい、結果の集計・分析も2人で行いました。 一般的には、サンプル数380というのは決して多くはありません。また対象も松山大学の学生に限られています。しかし、そうした「弱点」には留意した上でなお、この成果を市の施策に役立てていただくことは可能だと考えました。 私も委員を務める「松山市放置自転車対策協議会」では、従来から「学生パワー」への強い期待がありました。また、実は、このアンケート実施の背景には、2人が出かけたヒアリング先の市役所の方放置自転車に対する意識や実態を調査。その結果を公的な場でプレゼンテーション!放置自転車という地域問題に取り組んだ、坂本梨沙さん(左)と大東希さん(右)。法学部法学科甲斐 朋香准教授

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る