Creation-163号
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の強力なアドバイスがありました。そこで、協議会で学生に発表の機会を頂けないかと市側に提案し、今年6月に、場を設けて頂きました。 学生にとっては非常に緊張する場で、負担も大きかったはずですが、研究を研究で終わらせずに発信することは大きな経験となった筈です。また当日は私のゼミに所属する2、3年次生も臨席。先輩である2人のプレゼンテーションを見学しました。 学生が公的な場でこうした提言を行うのは前例があまりないので、メディアにも取り上げて頂きました。2人は、就職活動や勉強の合間にそうした対応をしなければならず、大変だったと思います。しかし、自分たちの研究に価値があれば、地域社会は反応してくれるのだと、学生たちが実感できたのは、大きな励みだと思います。後輩たちにとっても、良いお手本ができたかなと思います。インプットとアウトプットそのバランスが大切 今回の経験を通じて、教育的にはメリットだけではなくデメリットも感じました。一つは、先にも述べたように社会と関わらせる時には、予想もしなかったストレスが生じるということです。とにかく反響が大きくて、取材が殺到したのですが、その時間を別のことに活用させてあげたいというのも本音ですね。また「研究成果のアウトプット」貴重な体験の機会を学生に与えて頂いたことに感謝する半面「インプット」をもっと大切にしなくては・・・との思いを強くしました。「実践」というと、ともすれば学外に出かけて、行動することに眼が向きがちです。でも、文献を読み、分析するという地道な作業も、同じように大切。教育者として、そのバランスをしっかりととらなければいけないと省みた次第です。俳句甲子園参加者のためのランチマップ制作 他にも、たとえば俳句甲子園にやってくる全国の高校生のためのランチマップ作成は、大学側が間に入ることで、ささやかながら人と人とをつなぎ、まちを元気にするお手伝いができた例だと思います。 これは元々「商店街の活性化策について考えたい」という学生がいたので、商店街の関係者の方と引き合わせたところ、マップ作成を考えているのでご協力を、という話になったのが契機でした。それとほぼ同時期に、俳句甲子園の関係者からは、こんな悩みを聞いていました。大会の際には、参加者だけでも200名以上の方が、商店街で昼食や休憩(兼作戦会議)をとったり、買い物をしたりします。そのメリットをもっと前面に打ち出し、商店街ともより緊密に連携したいが、年々大規模になる大会の運営で手一杯だというのです。 そこで、学生には、まずは大会に合わせて、マップの試作版を作成・配布してはと、アドバイスをしました。そうすれば、たくさんの利用者の反応を確かめ、商店街側にフィードバックもできます。このマップ作成も、昨年、今年と続けて、好評でした。 ただ、成果を出すことを優先してレールを敷きすぎるのではなく、テーマ選びの時点から、学生の主体性をなるべく大事にとは心がけています。たしかに時間はかかりますが、そのプロセス自体も、大切な「学び」ではないでしょうか。学生が個々人の問題意識を出発点に社会に眼を向け、関わっていく。そのきっかけづくりが、私の役割だと思います。地域社会に貢献する“実践”松山市放置自転車対策協議会で発表する二人。学生による提言は、多くのメディアにも取り上げられた。俳句甲子園に参加する高校生向けに作られたランチマップ。歓迎の気持ちをこめて、イラストも文字も手描きで仕上げた。

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