Creation-164号
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「与えられた」教育から脱却し自ら「求める」姿勢を育成する 大学に入学するまで、ほとんどの学生の皆さんは「与えられた」勉強を行ってきました。しかし、大学ではそれまでの学習スタイルとは大きく異なり、自分自身が「求める」勉強を行っていく必要があります。そのためには、まず、個々が「将来自分がどのように生きていくのか」「何を生業にするのか」を見極めなくてはなりません。その上で「自分は何を勉強すべきなのか」「どんな能力を身につけるべきか」を考え、そのための勉強を行っていくのです。目的を持つことができれば、大学のカリキュラムと自分が求めている目的との関連性が理解できます。ビジョンがないまま授業を受けても、そこにはミスマッチが起こってしまいます。つまり、自分から求めて勉強することにより、自分の生き方についても自信を持って追求することが可能なのです。しかし、大学に入ったからと言って、すぐに将来像を描ける学生はごく少数です。そこで大学としても、学生自身がそれぞれの将来像を描けるような教育を行っていくことが肝要と言えるでしょう。 合わせて、今の若者はあまりにも恵まれすぎていて「自分で生きていくんだ」という気持ちが希薄なように感じます。時代の違いもありますから、そのことを徒に責めても、利する部分はありません。そこで我々に課せられた使命は、学生が将来像を描けるようなヒントを与えていくことです。その一つがキャリア教育であり、インターンシップです。社会疑似体験をさせることで、目的や勉強方法を見つける手助けを行うことは、現在、本学でも最も力を入れていることの一つです。体力や精神力を含めた総合力が社会での評価に 経済状況が悪化する中では、就職についても非常に厳しいと言わざるを得ません。最低限の単位を取得し、卒業すれば就職できるというような甘い時代ではないのです。そこで、厳しいからとただ手をこまねいているのではなく、厳しい中を勝ち抜いていける準備、すなわち在学中に自分自身を社会に売り込むための材料を備えておくことが大切です。例えば、資格取得などもその一つ。また、採用する側の企業は、勉学や知識ばかりでなく、体力や精神力などを含めた総合力で判断します。加えてその体力や精神力を正しく活用するための道徳観、倫理観も必要不可欠です。そこでキーとなるのが部活動やサークル活動。これらは集団活動を通じて社会性を身につけることができる貴重なきっかけです。また、授業ではゼミ活動がその中核になります。集団の中で「聞く」「意見交換する」「議論する」ことで社会性を養っていくことができ、さらに合宿などを通じて相互理解を深め、人間性を高めることが可能なのです。 私たちが仕事をしていく上で、最初から「仕事が本当に楽しい」と感じる人は極めて稀です。趣味が実益になるという恵まれた環境にあればいいのですが、それでもまず基本的な仕事を覚えるための努力や苦労が必要です。つまり、誰しも仕事に楽しさややり甲斐を感じることができるまでには、忍耐力が求められるのです。そのためにも、ある程度のところまで耐えられる力、精神力、体力があるかどうかも重要視されるのです。言い尽くされたことかもしれませんが、そうした心身の鍛錬こそが、今、社会に求められる人間力なのだと信じています。まずは、受け身の教育から抜け出すべし。「将来自分がどう生きていくのか」という目標をしっかりと見極めていければ自分の学ぶべきことも理解できる。“実践”できる人間力教育第14代学長森本 三義昭和50年3月松山商科大学経営学部卒業。昭和56年3月大阪大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。平成2年10月松山大学経営学部教授に、平成19年1月現職に就任。〈No.164〉 2010 Winter

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