Creation-164号
6/20

“実践”できる人間力教育お遍路さんへの「お接待」が自分自身を見直す好機に 松山大学公認NPO法人「松山大学学生地域創造研究所Muse(ミューズ)」は、2008年8月に発足しました。その前身は、2005年に授業の一貫で行ったお遍路さんの研究チームです。30年ほど前、早稲田大学の学生さんがお遍路さんの経済効果を調査したのですが、それから随分と時間が経過しているので、現代の実態を「体験」「調査」「情報」の3本柱のもとに調べようという取り組みでした。具体的にはお遍路さんのためにお接待を行い、アンケート調査を実施。そこで学生たちは「お接待」という非常に貴重で、新鮮な体験をしたんです。目的意識が明確なボランティアとは違う「無償の行為」は、学生たちに人と人との関わりの神髄を知らしめ、その関係性の中から自分を見直すチャンスを与えてくれました。お蔭でそのメンバーたちの結束が非常に強くなり「ほかにも何かやってみよう」という声が起こったんです。 その後、遍路マップを作ったり、地球温暖化防止のためのエコ活動に取り組んだり、テレビ番組の制作に携わったりと、グループ単位で様々な活動を行ったのですが、その中で新たな問題が生まれてきました。それはメンバーが卒業してしまうこと。顔ぶれが変われば、活動はゼロからのスタートになりますから、せっかくのソフトや経験を蓄積できない。そこでOBも継続して参加できる体制を目指して、NPO法人となったのです。 NPO法人化から間もないのですが、早くも手応えを実感しています。社会人となったメンバーとの交流は、現役の学生たちに様々な刺激を与えてくれており、活動に厚みが出たと自負しています。ミューズの活動を通じて学生たちのアイデンティティを構築 ミューズのルーティンな活動としては、ペットボトルのキャップの回収、坂の上の雲ミュージアムで配布する情報紙「松山新聞」の制作、遍路マップの制作があります。「松山新聞」は年3〜4回、1号あたり3万部発行されており、取材・編集・執筆などすべてを学生が行っています。遍路マップは卒業生が継続して担当しており、こちらは年1回発行しています。このほか2009年には広島から神楽を招いて松山で上演。そのイベントのサポートを行い、広島と松山の文化交流に寄与しました。また、しまなみ海道開通10周年にあわせて、南海放送さんとミューズがタイアップしたモニターツアーを実施したり、松山城のロープウエイ乗り場で明治の松山の偉人展を開催したり、「坂の上の雲」と新田長次郎をテーマにした松山大学シニア短期留学特別講義を開催したりと、非常に多彩な活動を展開しました。お蔭さまで、メンバーたちは普通ではできないような貴重な体験をし、その体験を通じて個々が成長することができています。 このミューズが目指すのは、様々な活動によりそれぞれのアイデンティティを構築していくこと。様々な分野の方と関わることで、社会に出てから最も大きな力となるコミュニケーション能力を磨いて欲しいと願っています。幸いなことに各方面からオファーを頂戴することも多く、次々と新しい分野にチャレンジが果たせています。今後の課題はそのオファーを上手に取捨選択していくことだと考えています。こうした問題をクリアして、存在感を示していきたいですね。昨年11月に開催された「シニア短期留学」では、学内外の講師による講義のほか、実際に遍路姿に身を包み、お遍路歩きを体験するアクティビティも行われた学校法人松山大学監事松山大学名誉教授特定非営利活動法人松山大学学生地域創造研究所Muse 理事長金村 毅教授 一過性ではなく継続して社会と関わっていく仕組み。それを実現したのが「松山大学学生地域創造研究所Muse」。〈No.164〉 2010 Winter

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る