Creation-164号
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 子どもの頃から将来は高校教師になりたいという夢をもっていました。それで大学院に進んだのですが、そこで出会ったのが19世紀のイギリス女流文学です。そのとき文学はまったくの門外漢。それなのにシャーロット・ブロンテの作品に出会い、強烈に惹かれたんですね。当時のイギリス女性は「家庭の天使」と呼ばれ、家庭の中でのみ活動が許されていました。しかし、能力のある女性は「外に出たい」という欲求を抑えることはできません。ブロンテの作品は、そんな社会との葛藤が描かれており、時代背景を調べ読み直していくと益々面白さを感じるんです。もともと歴史が【松大な人2】好きだったこともあり、それこそ推理小説を読むような感覚で、作品の中に秘められた時代性を読み解いていくことに夢中になりました。19世紀のイギリス文学をもっと知りたい、もっと研究したいという思いが、今の私の原点と言えるでしょう。 実際に大学教員になって感じたのは、自分が得た知識を学生に還元していくことの難しさ。楽しさ半分、プレッシャー半分といったところでしょうか。これは私の持論ですが、今、離職率が非常に高い原因の一つに、大学時代にしっかりと自分と向き合っていないことがあると思っています。すなわち、本を読んでいないんですね。「文学は社会で何の役に立つのか」という疑問を口にする学生がいますが、作品を通じて自分を見つめ直したり、思考力を高めたりすることは非常に大切です。松山大学が標榜する実学主義と文学は、水と油のように思う方もいるでしょうが、私は文学こそが実学の根本であると考えています。本は私たちに思考する機会を与えてくれ、人間を多角的に見る力を養ってくれます イギリス文学には馴染めないと思っている学生は、まずは『ハリー・ポッター』を読んでみませんか。あのシリーズにはイギリス独特の歴史や伝統が散りばめられていて、入り口にはぴったりだと思います。略 歴東京都港区生まれ2002年/日本大学文理学部卒業2004年/日本大学大学院文学研究科     博士前期課程修了2007年/日本大学大学院文学研究科     博士後期課程単位取得満期退学2007年/日本大学非常勤講師2008年/松山大学講師専 門英文学授業担当英語Ⅰ、英語Ⅱ英語文学レッスン法学部新井 英夫 講師〈No.164〉 2010 Winter

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