Creation-171号
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カード型サンプラー」を持参し、学校屋上に設置しました。さらに、ポータブルサンプラーを避難所内に2カ所設置。室内粉塵もサンプリングしました。 その結果として、屋上では風速3m/s以上で南からの風向きのとき、アルテルナリア属(※)などの真菌胞子を含んだ10μm以上の大きさの粉塵が、黄砂日に近い状態で飛散していました。出入口付近の粉塵調査から、地上2m前後の比較的低い場所でも大きな粒子の粉塵が多数飛散していると思います。また、室内における5分間の調査でアルテルナリア属が観察されたことから、多数の真菌類が粉塵とともに空気の流れに乗って、さらには人の衣服に付着して室内に入ってきていると考えられます。これらの情報を現地の対策本部の方に伝えました。緊急の対策として、咳症状の多い地区現地では、震災直後から咳症状を訴える被災者が激増しましたが、その原因が分からなければ対策も治療も行えません。私は岡山県医師会から「粉塵に関して調査できないか」との依頼を受け、6月7~10日の4日間、宮城県石巻市立湊小学校にて粉塵等の調査を行いました。 被災地には津波でさまざまなものが流されてきており、それが土や砂と混じり合って粉塵と化し、あらゆる場所へ飛散しているように見えました。湊小学校では、咳症状のある被災者の診察、粉塵・花粉・真菌胞子の調査、学校付近のヘドロ、粉塵堆積物の採取と分析を実施。私は大気中の花粉を捕集する「バーの被災者やボランティアの方にN95マスク2万5000枚をに配布したところ、咳症状を訴えられる患者が激減したとの報告がありました。 このような環境では、上気道(鼻腔や咽頭・喉頭)等に炎症を起こしますので、これから現地で活動をする学生は、必ずマスク(できればN95等)を着用してください。うがいや手洗いの励行、ゴーグルや厚めの靴の着用、入室前には衣服に付着した埃をはたく、空気清浄器の設置なども重要と考えます。もちろん、状況は刻々と変化していますので、現地の方と密に連絡を取り合い、現地での活動に留まらない、息の長い支援を行うことも大切になってくるでしょう。※アルテルナリア属…室内においてはススカビと呼ばれ、壁などにスス状に生えるカビの仲間。いろいろな種があるが、喘息等のアレルギー症状の原因となる。薬学博士難波 弘行 薬学部教授咳症状を訴える被災者が激増した理由とは?大気中に飛散する粉塵等の実態を調査して現地での活動には高気密マスク着用の必要性を訴える教授視点報告● 粉塵調査東日本大震災支援レポートがんばろう、日本!いま、松山大学にできること。未曾有の東日本大震災が発生してから半年余り経った今でも被災地ではがれきの撤去や生活再建など、多くの課題が残されたまま。「松山大学の一員として今、できることはないか」と考え、行動し、被災地から帰ってきた教授・学生の声、そして今後の支援活動を紹介する。CREATION 〈No.171〉 2011 Autumn9

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