Creation-171号
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れないようなことに手を出していたのです。 日本は金融危機が起きると「失われた10年」などと呼んだりし、そのうち住宅価格(担保価値)が上がってきて、銀行が自然に生き返るだろうと、何もしないで乗り切ろうとしました。そこはアメリカの金融機関と日本の金融機関の差、というよりアメリカ人と日本人の考え方の差かもしれませんが、ずっと研究しながら感じている部分です。  これまでに書いてきた論文もいろいろとあり、そろそろまとめないといけない時期に来ているのかなとも思っていますが、ある程度研究が進んで本を書き上げることができたら、次は東南アジアや日本について研究していこうかと考えています。※1:東京証券取引所と関係の深い証券会社が自主的に立ち上げた組織。金融・資本市場に関する調査研究とその成果の公表などを通じ、学術振興を図る※2:アメリカ証券取引委員会※3:アメリカ政府説明責任局が破綻してアジア通貨危機が起こっています。それは金融機関としては当然の行為ですが、その結果はアジア経済に大きなダメージを与えました。 アメリカ金融のやり方は日本でも取り入れられています。昔、日本では長男以外は家を持っていなくて借家住まいでしたが、1970年代から都市銀行がお金を貸すようになり、持ち家率が増えました。証券化という部分ではあまり真似ていませんが、この住宅ローンのシステムは、アメリカから輸入しているといってほぼ間違いないでしょう。 アメリカでは何度も金融危機が起きています。しかしアメリカの銀行は金融危機が起こるたびに何か新しい金融商品をつくり出し、それで収益を上げてリカバーしています。アメリカの銀行に勤務していた人に聞いたことがあるのですが、どうしてそういうことができるかというと、「若い頃から自由にお金を使わせてもらえるけれど、収益を上げろというプレッシャーがすごい。だから次々と新しい金融商品をつくり出している」ということでした。アメリカの銀行がサブプライム問題のときに困って何をしたかというと、刑務所にお金を貸すという日本人ではちょっと考えら公益財団法人 日本証券経済研究所に客員研究員として招かれ、ワシントン、ニューヨークの金融機関を視察したときの様子。アメリカと日本の差異【略 歴】 1965年 福岡県福岡市生まれ1989年 九州大学経済学部経済学科卒業1994年 九州大学経済学部助手1995年 松山大学経済学部講師(1997年助教授、2004年教授)1999年 ノートルダム大学経済学部訪問研究員(2000年5月まで)2000年 マサチューセッツ大学経済学部訪問研究員(2000年9月まで)2009年 証券経済学会 第72回全国大学準備委員長2011年 愛媛大学法文学部総合政策学科非常勤講師2011年 公益財団法人 日本証券経済研究所 客員研究員(現在に至る)経済学部教授 公益財団法人 日本証券経済研究所 客員研究員 掛下 達郎 Kakeshita TatsuroCREATION 〈No.171〉 2011 Autumn4

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