Creation-176号
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個々の企業が雇用コストを削減して利益を上げようとしても経済全体の成長率は下がる 私はサービス経済論という講義を持っています。「経済が発展するにつれて第一次産業から第三次産業へ比重が移っていく」というペティ・クラークの法則が有名ですが、先進諸国では経済のサービス化が進んでいます。アメリカのフュックスは半数以上が第三次産業に従事している状況を“サービス経済”と名付けましたが、日本でも1970年代中頃には就業者の約半分が第三次産業に従事していました。授業では、経済がサービス化するとどうなっていくかということを話しています。 一般的には経済がサービス化すると成長率が落ちるといわれています。サービスは人と人との関係において生じるものであり、機械化できない、技術革新が及びづらいものです。サービス産業という労働生産性上昇率の低い産業が経済の中で比重を大きくしていくと、経済全体の労働生産性の伸び率がどんどん落ちていくため、経済成長率が落ちるというのがその理由です。しかし、モノを作る産業も、サービスを原材料として使っているという相互依存関係にあるので、そんな中で本当にサービス化が経済成長率を落とすのかということを問題として、10数年前から分析を始めました。 サービス化が進む要因の一つに、女性の社会進出による家庭内における育児、洗濯、料理などのサービスが外部化したこと、もう一つは企業内部で生産していたサービスが市場化したことがよく指摘されます。 私は数式でモデルをつくって出てきた答えを比較することで分析するのですが、消費におけるサービスの割合が高くなってきたとき、果たして経済全体の成長率が落ちるのかを計算して分析を行いました。結果として経済のサービス化が進んでも成長率が落ちない場合もあるということがわかったのですが、高齢化などにより労働人口がどんどん減っているため、今後は同じ結果を望むのは難しいと思っています。経済のサービスにおける非正規雇用への代替と経済成長経済が発展するとサービス化する【略 歴】1954年 東京都生まれ1977年 神戸商科大学商経学部経済学科卒業1982年 神戸商科大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学1982年 松山商科大学経済学部専任講師1994年 松山大学経済学部教授2012年 松山大学経済学部長経済学部長間宮賢一MamiyaKenichi5CREATION 〈No.176〉 2013 Winter

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