Creation-176号
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マジダイの現場「学びを本気で変えていく」──── 松山大学、その答え。 松山大学女子駅伝部は昨年、一昨年と2年連続で全日本大学女子駅伝(通称:杜の都駅伝)で6位にまで与えられるシード権を獲得。今年10月28日に行われた大会では4位入賞を果たし、3年連続シード権獲得という快挙を成し遂げた。2008年7月に創部したばかりの若いチームが全国の強豪チームを相手にここまでの成果を上げられた背景には、選手のがんばりはもちろんのことだが、大西監督の熱心な指導があってのことだった。大西監督が松山大学に赴任したのが2006年。最初の1年間は協力者を集めることと選手の勧誘活動に費やされた。「実績もないから選手も呼べない、学内の理解もそんなにない中でのゼロからのスタートでした。周りの協力なくして日本一になることは絶対にあり得ません。まずは所属している経済学部の先生方に協力をいただき、2名で女子駅伝部をスタートさせ、結果を出していく中で次第に学内全体に協力者も増えてきました。女子駅伝部の目標を、たとえ可能性がゼロに近くとも『日本一を目指す』と掲げ、あとはどうすれば日本一になれるかということだけを考えて行動してきました」と大西監督は語る。 大西監督は日本体育大学陸上部短距離コーチを経て名城大学女子駅伝部コーチに就任し、チームを全国優勝へと導いた実績を持つ。そのノウハウを活かし、他大学と同レベルまで条件を整えるため大学から予算を獲得したり、学内にできた後援会から寄付を募ったり、現場での指導以外にも熱心に活動を続けてきた。 選手に力を付けさせるためには合宿での集中練習が欠かせない。今年も46日間という、おそらく日本一長い期間の夏合宿で身体と精神を徹底的に鍛えてきた。合宿日数が長期になれば当然費用の負担も大きくなるが、ホテルではなくロッジに宿泊し、自炊することで費用を抑え、その分日数を長く確保している。「自分たちで支度しないと食事も出ない。そこに人の温もりやありがたさを感じることも学生にとっていい経験です。練習は厳しいし、他大学では問題にしないようなことが起こることもあります。でも選手たちが納得できるまでしっかり話し合いますし、時には親御さんへ意見することもあります。でもそれは『日本一になってもいいチーム』に必要な厳しさなんです。そして厳しいことがあるから喜びも大きいんです」。 松山大学女子駅伝部の目標は「日本一になること」。その軸は決してぶれることはない。選手にはその“意識”を徹底的に身につけさせる、というのが大西監督の指導方針だ。「“がんばる”ということは自分で決めたことをやり遂げることです。これは何をやるにしても大切なこと。それを意識して生活する・しないでは全然違ってきます。」という大西監督。 日本一になるために、ぶれない目標を掲げて自分と向かい合い、弱いところを潰していく、という考え方は、強い精神を持った人間となるための“意識”を自分のものにするということ。それは、どの分野にあっても活躍できる人間としての成長にも通じている。 現在の女子駅伝部の部員数は女子11名と男子1名、少数精鋭ではあるが、何かあった時には少々心細い部員数だといえるかもしれない。実際、今年の全国大会前には例年になく故障者が続出し、シード権確保が危ぶまれるほどだった。しかし、故障者がでるくらい厳しい練習をしなければ全国大会で上位を狙えないし、故障者が出過ぎてしまってもレースで勝てない。そのバランスが難しいという。チームとしては大人数を抱えて調子のいい選手をレースに投入する方が楽なのだが、大西監督はあえて少人数のチームにこだわる。「指導者としては大人数からふるい落とす方が楽ですが、うちは15名しか採らないけれど、その代わり一人ひとりをしっかり見る。それが『松大らしさ』なんです。うちに来る選手たちも5校6校と勧誘を受けていて、その中から来ています。やはり責任がありますし、信頼関係を大切にしなければ。それに、少人数だったら『自分が故障してしまったらチームはどうなる?』という責任感も生まれます。最後はやっぱり“意識”なんですね。意識が変われば同じことをやっていても伸び率が違います」。 3年連続シード権を獲得したことにより、女子駅伝部は新たなプレッシャーも背負うこととなった。その課題を選手たちがどう理解し、どう意識して乗り越えていくのか。日本一になるという目標に徹底的にこだわり、懸命に立ち向かっていく姿から、ますます目が離せない。選手の“意識”を変える日本一長い夏合宿日本一を目指してゼロからスタート「松大らしさ」を武器に全国の強豪に立ち向かう7CREATION 〈No.176〉 2013 Winter

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