CREATION_177号
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ネットワークのモデルと仕組みITの受容態度を性格別に比較検証するicesled Ser. Goldbergによってジネス管理学修士」、MPA.は「公共管理学修士」とした方がいいのかもしれません。いずれにしても、組織を「管理」「経営」「運営」するのは同じです。営利企業の「経営」と、非営利のNPOや地方公共団体、財団や学校、病院などに共通する「経営」があると思います。私がアメリカで学んだ非営利組織の「経営」はそのようなものでした。帰国してからは金融界を取り巻く環境が大きく変化したこともあり、銀行を退職して大学院に入り直し、学生時代に経営システム論を教えていただいた真田英彦教授に師事しました。先生は1972年にはすでに現在のインターネットの仕組み(パケット通信)について修士論文を発表された方でネットワーク論の大家でした。 「ICT(情報通信技術)の勉強をしなさい」として課題をいただいたのが「マイクロデシック・ネットワーク」。私の今の研究につながっています。私の研究はITを使って人の幸せにつながる新しい仕組みを考えていくことです。「マイクロデシック・ネットワーク」というのは「基地局を持たない携帯電話の仕組み」みたいなものです。携帯電話は基地局につながらないと、隣の人とでもつながりません。もしも隣同士の携帯電話が基地局を経由しないで直接つながって、またその隣とつながって、またその隣と、ということを繰り返していったらどうでしょう。バケツリレーのようにつながりのつながりがひとつの大きなネットワークを作り出します。隣と隣のつながりは「極小で最短(マイクロデシック)」なのですが、全体としては強固なネットワークを作ることが出来るのです。この研究では、技術面のみならず、制度面や経済効果、インターネットの運用の仕組みなど多くの事柄を調査しました。インターネットは、ネットワークのネットワークという意味で、このような仕組みが応用されています。実は、インターネット技術の標準化はボランティアですから、NPOの経営を学んだことがこんなところで活かされたのです。この数年にわたって、性格によるITの受け入れ方の差(技術受容態度)について研究をしています。松大のIC学生証による出席認証システムを利用する際、学生証を裏返してタッチする人がいます。技術的には学生証の裏表はICデータの読み取りに関係ありません。学生証の表には、顔写真のほかにもプライバシーに関わる情報が記載されています。恥ずかしいから、写りが悪いから隠すのか、気にしないから平気なのか。それとも、プライバシーに敏感だから裏返すのか。同じ頃、経営情報学会で、新潟国際情報大学の先生が指静脈パターンの認証(銀行のATMで見かけるのと同じもの)で出席を取るシステムを導入しようとして、プライバシー保護が問題となり許されなかったという発表を聴講しました。実は、指静脈パターンと比べると学生証には電子マネーの使用状況なども含め、目には見えないけれど、より多くのプライバシー情報が含まれています。技術受容態度はITの見た目に左右されるのだろうか。疑問が湧きました。そこで、この先生と共同でそれぞれの大学で主要性格5因子モデル〈※1〉を用いて、技術受容態度の差を調査・分析しました。その結果「神経質」な人はプライバシーに敏感なことが検証できました。その後はオーストラリアの研究者との国際比較や、国立情報学研究所と協力した2千名規模のwebアンケートを実施するなど引き続き研究しています。最近は、これらの事柄をひとつにまとめてIT   .   ..vEnab〈※1〉心理学者LR分類された5つの性格因子。外向性、協調性、勤勉性、情緒安定性、知性で表現される。研究者と共同研究を続け、今年1月に1冊の書籍として上梓しました。「情報技術が可能にするサービス」と言ったらよいでしょうか。ITを活かしながらプライバシー等守るべきことは守って生活を豊かにしていく。数学的なモデル、電子商取引、電子政府、医学、教育などさまざまなトピックを取り上げていますが、この本では、日本の最先端文化でもあるゲームや、愛媛に関わり深い農林水産業に関しては、まだ検証できていません。今後はこのような分野についても研究をしていきたいと思っています。というくくりで国内外のITEnabledServices,eds.byShiroUesugi,Springer(ISBN978-3-7091-1424-7)上杉志朗編著。2013年1月31日発行。1010CREATIONCREATION 〈No.177〉 2013 Spring

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