CREATION_177号
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「学びを本気で変えていく」────松山大学、その答え。原点に立ち返って作品を解釈する頭と身体を駆使する得がたい経験大学と地域連携の 一 助としての活動人文学部英語英米文学科の      奥村ゼミでは、10年前から英語で書かれた戯曲をもとに、舞台美術から衣装、演出まですべて学生たちで手がけた演劇公演(日本語版と英語版)を卒業研究として観客に披露している。英語英米文学科で海外の戯曲を解釈しながら論ずるのはあたり前のことであるが、それを実際に学生自身が舞台で演じることはほとんどない。もともと演じるために書かれた戯曲を自分たちで翻訳もし、舞台という“カタチ”にしていく一連の過程を経験することで、作品そのものとその背景、そして舞台芸術について理解を深めていくことができるのだ。「学生たちは戯曲作品を舞台用に翻訳するところから始めます。日本と外国では宗教などを含めた文化的背景に違いもありますし、直訳では作者の意図が通じない場面も多々あります。舞台上で通用するセリフとするためには高度な英語力と、それ以上に高度な日本語力が求められます。そしてセリフをしゃべることは想像以上に難しいことです。ともかく、作者が作品に込めた想いをより深く理解することが必要になってくるのです」と奥村教授は語る。上演とは、観客との一期一 会であり、失敗は許されないため、そこに生じるプレッシャーは生半可なものではない。準備段階から関わってきた人々の想いと労力を学生たちは一身に背負うことになる。舞台上ではセリフも含めて相手との真剣勝負であり、自分自身の頭と身体を駆使したイマジネーションも必要とされる。「お互いが真正面からぶつかり合うなかで次第に堅いスクラムを組み、舞台を完成させていくうちに強固なカンパニーが誕生していきます。英語英米文学科ですから英語好きな学生は多いけれど、芝居をやりたいという学生は滅多にいない。しかし劇の練習をしていくうちに、消極的だった学生も活き活きしてきます。人前で他人を演じることで自分らしさを発見し、人間的に成長していくことができるのです」。膨大な作業を共に進めていくなかで、学生は教室内だけではできないトラブル解決能力や感謝の気持ちを身につけることができると奥村教授は語る。公演が終ったあとの学生の間には深い絆が生まれ、忘れられない経験として心に深く刻まれるのだ。状態から上演に向かうわけではない。3年次には地元で活躍している劇団の公演にインターンシップとして参加し、演劇について直接的に学んでいく。そのなかでゼミ生は社会人とのコミュニケーションの取り方を学び、世界を広げてゆく。劇団ととができる。この取り組みは、大学と地域における連携に関するコンテストでグランプリを受賞するという成果をあげることもできた。と協力しながら、外国で英語劇を上演することで交流できればという可能性も模索中だ。教室から踏み出した“舞台”は、学生たちの可能性が大きく広がる一つのきっかけとなる。学生たちはまったく“無”のしても“学生”という新風が入ることで活性化され、互いに良い影響を及ぼし合うこ将来的には海外の提携校Okumura Yoshihiro県内を中心に活動する「劇団P.Sみそ汁定食」の公演にインターンシップとして参加。その経験を自身の公演に活かしていく。1111舞台創りを通して英文学の知識を深め自分を再発見する人文学部長奥村 義博

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