CREATION_177号
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支援の輪を広げるには個人レベルではなく松山大学全体で取り組まねばならない2011年4月、松山大学に聴覚に障がいを持つ学生が入学したことをきっかけに共通教育特殊講義「心のバリアフリー」が開講され、受講生を中心に彼を支援する準備が進められた。そして、翌年発足されたのが、障がい学生支援団体「POP」。「Pた名称で「人はパズルのように個々が違っている。一人ひとりが支え合えば、より力が発揮できる」との想いが込められている。POPの活動の一つが「ノートテイク」。耳の聞こえない学生の耳の代わりとなり、教授の話を聞き取ってノートに書き留めていく、同時通訳のようなものだ。ノートテイカーは教務課へ登録し、教務課が登録者のシフトやログの管理等を行っている。現在の登録者数は約30名。しかし実際にシフトを組むことができているの松山大学に障がい者支援の文化を根付かせるための“拠り所”が必要POPが発足して1年、スタッフは「街で障がい者の方を見かけても、やみくもに助けるのではなく、その人に必要な支援は何かを考えて臨機応変に動くようになった」と、お互いの成長を実感し合っている。しかしながら今後の課題も大きい。その一つが“継続性”。現在は学生支援室の 一角にテーブルを構えているが、学生・教職員の意識やモチベーションを維持するには、母体となる組織や拠り所となる空間が必要だ。今後は「障がい学生支援室」の設置に向けて大学に働きかけ、POPを中心とした学内での障がい者支援の文化を根付かせる取り組みを続けていく。POPの活動記録(一例)f Puzzleieces 」の頭文字から取っは10名程度だという。また講義では肢体不自由学生のために文京キャンパスの「バリアフリーマップ」も制作。実際に車いすを体験した受講生は「私たちが何気なく利用している施設が、想像以上に大変であることを実感した」と話す。ただ創設当初はどうしても個人の支援に頼りがちになり、活動の行き詰まりを感じていたという。その頃、聴覚障がい学生の支援に関する全国規模のシンポジウムに参加。そこで、他大学の活動を学び「支援は個人ではなく全学的に行うべき」ということに気づき、まずは環境づくりに取り組んだ。結果、松山大学側の支援を得て、学内で「『障がい学生支援』に関する学生支援室FD〈※〉」を実施、約30名の教職員が参加した。「心のバリアフリー」を担当する原田美藤学生支援室特別指導員とスタッフがこれまでの活動や高等教育における障がい学生支援の動向などを発表し、松山大学の現状と改善アイデアを共有し合った。 〈※〉FD…ファカルティ・ディベロプメント。教員が授業内容・方法を改善し、向上させるための組織的な取り組みの総称(文部科学省HPより)。1氏原秋里さん(法・2年)2酒井大輔さん(法・2年)3鎌田泰地さん(人社・2年)4冨士郁さん(法・3年)5横山睦実さん(法・4年)6森貞千晶さん(人社・2年)※学年は取材時のものノートテイクは2人1組になり、利用者を挟んで行う。ノートテイクのログ。パソコンを使った「パソコンノートテイク」という方法もある。手話で「こんにちは」と挨拶学内に向けて情報発信。全国の大学生が集まるシンポジウムにも参加。その他に、ブログ「松山大学ぽぷろぐ」を公開。<http://popmatsu-u.jugem.jp>1818ノートテイクPOPの現状報告マツダイアイズ手話会の開催123456 O    障がい学生の方が困っていたら手助けし、みんなが過ごしやすい大学にしたい共通教育特殊講義「心のバリアフリー」を受講した学生が中心となり、障がい学生支援団体「POP(ポップ)」が2012年1月に発足。歴史ある本学ながら、障がいを持つ学生への支援がまだ未熟であった現状。学生自身の手で打破し後輩へつなげていくため、日々奮闘している話を聞いた。松山大学障がい学生支援団体「POP」

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