Creation-179号
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 法学部の甲斐朋香准教授のゼミ生が中心となって行っている「行政・まちづくりと学生をつなぐ取り組み」の成果が注目されている。松山市との協働による修学旅行コンテンツ「大学生と行くまち歩きツアー」の企画立案・実施、三津浜地区まちづくり協議会とコラボレートした高齢者福祉事業への参加、また「石本藤雄展」では若年層向けの広報について企画するなど、学生が主体的に地域の現場に入って活動を展開している。 甲斐准教授は学生と行政・地域をつなぐ役割を担い、情報収集や出会いの場づくりなどを行う。「“善き市民”を育みましょうというのが、これらの取り組みの目標。“善き市民”とは、自分の生活だけでなく周囲のことも少しだけ配慮でき、社会全体のことを考えて、自分から小さな行動を起こせる人を地域に増やせたらいいなと。そうなるためには机上での勉強と現場体験の両方が必要です。また、学生と関わることで、地域社会にも小さな変化があって欲しいとも思っています」と甲斐准教授は語る。 具体的には「“協働型まちづくり”を考える」「松山市の総合計画をつくろう」「地域公共人材リストをつくろう」などのメインテーマを学生に提示し、サブテーマを自分たちで考えていく。テーマが決まれば実際に現場に出て取材を進めていくが、それをきっかけに「コラボしませんか?」という話に発展することもよくあるという。 これまでの実績を頼って外部からの相談を受けることもある。愛媛県選挙管理委員会事務局からの呼びかけが契機となり、本学法学部との共催という形で、年に一度行っている学生対象の「選挙啓発ワークショップ」も、ゼミ生や講義の受講生たちが関わってきた。2011年には、学生の意識調査を松山市選挙管理委員会事務局と協働で実施。その手応えに力を得た市選管職員の奮闘により、今年7月の参議院議員選挙にて、全国初となる大学構内の期日前投票所の設置という成果へとつながっている。 学生に小さなヒントは与えるが、基本的には自主性を尊重する。最初は取材の段取りも質問の仕方もわからず消極的な学生たちも、自分たちの力で一度社会と学生が互いに影響し双方によき変革をもたらす研究から新しい動きが派生し学生が主体的に動き出す自主性を尊重しながら知るために行動する力を育む「学びを本気で変えていく」 ──── 松山大学、その答え。□意識向上につながるさまざまな現場体験のきっかけを提供する法学部 准教授甲斐 朋香Kai Tomoka継続的な行政との連携活動により、今年7月、全国初の大学構内での期日前投票所設置が実現した。(文京キャンパス内温山会館)現場を乗り切ると目つきが変わるという。今までは他人事と捉えていた話にも興味を持ち始め、積極的に情報を得ようと動き始めるのだ。「何がきっかけで学生たちは変化するかわかりません。なので、いろいろなところに出して経験させてあげることが大切なのかなと。萎縮してしまわないように互いに意見を言いやすい雰囲気づくりや、学生が持っている“種”を引き出すことが私の役割です」 学生が地域や行政に関わっていくにあたっては、大学としては、学生を単なる労務の提供者ではなく、対等なパートナーとして関わることで成長できるよう考慮しなければならない。さらに、学生が現場で触れたこと・感じたことを発信していくプロセスの必要性など課題もある。今後は「道後オンセナート2014」などのイベントも控えており、地域・行政・学生が互いに影響し合うことでよい方向へ変化することを期待している。9CREATION 〈No.179〉 2013 Autumn

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