CREATION_202号
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客観的・主観的評価は影響し合っているのか結果をフィードバックし仕組みの改善につなげたい 「優秀とされた店長は、素の一つに「店長がどれだけ優秀か」というものがあります。当時の指導教員を通して、研究対象としている、小売店をチェーン展開している企業からデータを提供していただけることになり、「店長が変わることで人件費や売上、利益などの業績はどのように変化するのか」「人件費を低く抑えて高い売上をあげている店長(=優秀)はどのように評価をされているのか」などについて、その〝どのように〟を統計的に推定するというテーマにたどり着き、研究を続けてきました。 現在はその先にある業績評価において高い評価を受けているのか」「客観的評価と主観的評価では、それぞれ店長の能力・努力に関する違った側面を捉えられているのか」「客観的評価と主観的評価は、理論予想通り相互補完的に機能しているのか」といった疑問について研究しています。 初期の研究では〝従業員の業績評価には、従業員の能力や努力についてどのような情報が反映されているのか〟ということを研究してきました。その次に興味を持ったのが、「売上高や費用、利益といった数値による〝客観的評価〟と、協調性や勤務態度、人材育成への貢献など上司による〝主観的評価〟が、どのように影響し合いながら従業員の評価に影響を与えているのか」ということです。 店長が評価されるとき、まずその店長が受け持つお店の業績数値をもとに評価されます(客観評価)。並行して、能力や情意に関する上司による評たせていないのではないか?などといったことについて、データ分析を通して明らかにしようとしています。 まだ始めてから日の浅い研究ではありますが、得られた結果はデータを提供してくれた企業価を受けます(主観評価)。これらの評価は、それぞれが店長の違った側面を評価することを通して、相互補完的に機能することが期待されます。本当に相互補完的な機能を果たしているのか?客観評価が良ければそれに影響されて、主観評価も良くなってしまう可能性はないか?そのような場合、当初期待された相互補完的な役割を十分に果に随時フィードバックしています。経営幹部からは「現場感覚では何となく把握していたことだが、数字として明らかになると改めて納得する」と言っていただけました。 いわゆるブラックな労働の問題にも、企業の仕組みが強く関わっている場合があります。業績が悪いと簡単に降格になったり、その後の人件費等の業績目標がさらに厳しくなったりするような仕組みの企業があるとします。そんな企業では、人員を増やせない、人件費が予算を超えるとボーナスが出ないので、仕方なくヤミ出勤をする、といったように、会社の〝仕組み〟によって従業員がどんどん追い込まれていきます。 企業は継続的に人事の仕事を抱えています。どれだけ職場の仕組みを改善しても全員が納得することはできないし、納得できないと従業員は働けません。この研究は評価の仕組みを改善するのに役立つと考えています。 この研究は企業のデータを入手することが非常に困難という前提がありますが、幸いなことに、現在利用しているデータの分析はまだ終わっていません。また〝仕組み〟の研究なので、幅広い業種に研究結果を応用することができると考えられます。今後は「計画の立て方はどうなっているのか」「評価に合わせて業績を調整しているのか」など、今のデータを違う側面からアプローチをかけていきたいと思っています。さらに、今の研究を充実させるため現地の研究者と共同研究を行う目的で、2019年の夏からウィーンとワシントンに1年間の海外留学に行く予定です。4CREATION NO.202 2019.72017年に中央経済社から発行された『販売費及び一般管理費の理論と実証』の、第2〜3章と第6章の執筆を担当。その他、「会計プログレス」などにも研究論文が掲載されている。従業員のどんな側面が評価されているか?従業員の能力や努力以外のどんな要素が業績評価に影響しているか?業績評価の仕組み従業員の行動にどんな影響を与えているか?評価方法が変わると従業員の行動にどんな変化があるか?

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