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2020年02月19日

人々の相互行為から 遊離することなく 内側から理解を深め 社会現象を読み解く

善悪を判断することなく社会の複雑な動きを追う

実際に当事者と出会い、一人ひとり違う生活史を聞かせてもらう経験を積むと、メディアを通して知る知識がいかに浅薄で一方的なものであるか思い知らされます。薬害エイズ問題で濃縮製剤の危険性が指摘されていたことが分かったとき、メディアはその時点で製造と使用をストップするべきだったと声高に報道しました。しかし実際にある薬害エイズ患者の声を聞くと「唯一痛みを取り除くことができるのが濃縮製剤だった。命が危険だとわかっていても、薬を使わずにあの激痛には耐えられなかった」と、当時を振り返って語ってくれました。ハンセン病についても、ご本人の苦労は言うまでもありませんが、親兄弟や親戚に至るまで偏見と差別に苦しみ、数えきれない悲劇がありました。
 実際のところ薬害エイズもハンセン病も、明確な〝悪者〞を見つけることが難しい問題です。社会学の目的は善悪を判断することではなく、物事が不確かなときに人々の経験を組み合わせて、全体の動きを理解することにあります。
 また、たくさんの方々から話を聞くにつれ、それぞれの人が生きた人生を自分たちの語りを通して伝えていくことの重要性を再認識させられます。具体的な当事者の語りを紹介することで、今もまだ根強く残る社会の偏見や差別が少しでも軽減されるよう今後も働きかけていきたいと思っています。

H・ガーフィンケルの著書と、一緒に研究を続けてきた仲間と発表したガーフィンケルのエスノメソドロジー理論を紹介する著書の数々。

人文学部社会学科教授
山田 富秋 YAMADA TOMIAKI

略歴

1974年4 月 東北大学文学部入学(社会学専攻)
1976年8 月~1978年7 月 UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)留学
1979年4 月 東北大学大学院修士課程入学(社会学専攻)
1981年4 月 東北大学大学院博士後期課程入学(社会学専攻)
1984年4 月 県立山口女子大学講師
1987年4 月 同助教授
1998年4 月 京都精華大学人文学部助教授
2001年9 月 早稲田大学博士(文学)取得
2005年4 月 松山大学人文学部教授(現在に至る)

この記事は松山大学学園報「CREATION」NO.204でご覧いただけます。

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089-926-7140

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