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2016年04月01日

ホームレスの実態調査から見えてくる労働と貧困を含む社会構造の問題

調査で判明してきたホームレスの実態

今でこそホームレスの存在は社会に認識されていますが、80〜90年代初頭にかけては、まるで存在していないかのような扱いでした。また〝ホームレス〞とは〝貧困〞から発生しているにも関わらず「なぜホームレスはホームレスにならざるを得なかったのか」という本質的な問題が注目されていませんでした。私の研究の目的は、問題であるにもかかわらず社会的には無視されがちな、下層の労働者やホームレスの実態を把握することでした。

昔、大阪の日本橋でダンボール収集を生業とした70歳代のホームレスに聞き取りをしたときのことです。その人は身体もボロボロで野宿生活を続けていくことは難しそうに見え、年齢から考えても生活保護を受けることは可能だと思えたので「なぜ野宿生活を続けるのですか」と聞いてみると「猫がいるから…(この猫たちを見捨てることはできない)」といわれ、どうしようもないやるせなさを感じたことがあります。生活保護を受けるのなら、一緒に生活しているペットを手放さなければならない、猫がいる限り路上で頑張るというその人の想いを知り、調査自体がホームレスに対して余計なことをしているような気がしました。

こちらは正義感を持って調査をしているつもりでも、当事者にとってみれば余計なお世話で、こちらの行為が逆に迷惑をかけているのかも知れないと悩み、当時は研究をやめようかとも思いました。しかし、ものごとには必ず両面がある、研究を続けていくうちにプラスの面も見えてくるだろうと、研究を続けてきました。

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