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2016年04月01日

ホームレスの実態調査から見えてくる労働と貧困を含む社会構造の問題

ホームレスの背景にある社会構造の問題に注目

昔、指導教官がホームレスへの聞き取りをするために数百ものテントが並ぶ公園に調査のお願いに行った際、あるホームレスが「あれがわしらを喰い物にしているやつか」と大声で怒鳴り散らしました。その発言には驚きましたが、研究者も一つの職業であり、執筆した論文が「評価」されて職に就くことができるという意味では、その人の怒りも一つの真実であると思います。だからこそ、調査に協力してもらった人々の不利益にならないよう、彼らの側に立った成果を発表しなければならないと思っています。

大阪のホームレス支援団体などの協力により、今まで釜ヶ崎地区の調査を続けてきましたが、研究当初は1万人弱いたホームレスが現在では2千人近くにまで減少しています。しかし、ホームレスは貧困問題から生まれ、貧困の背景には労働問題が存在しています。ホームレスの人たちも何か悪いことをしたわけではなく、勤め先が倒産→転職を余儀なくされる→就職先がなく仕方なく日雇い→ホームレス というパターンが多数を占めているのです。「当たり前に生活していたはずなのに、気付いたらホームレスになっていた」というのは社会構造的な問題です。普通の生活をしてきた先に貧困に陥る人たちがいる。なぜそうなるのか、社会構造のどこに問題があるのかということを研究を通じて明らかにしていきたいと思っています。

人文学部社会学科 准教授
大倉 祐二 OHKURA Yuji

略歴

1974年 大阪府生まれ
2000年 大阪市立大学大学院 文学研究科 後期博士課程 入学
2005年 同 単位取得退学
2006年 博士(文学、大阪市立大学)の学位取得
2011年 大阪市立大学文学部特任講師
2012年 松山大学人文学部社会学科准教授(現在に至る)

 

『ホームレス・スタディーズ』青木秀男編著(ミネルヴァ書房:2010)。第4章に大倉准教授が執筆した「放置された不安定就労の拡大とホームレス問題」、『落層 野宿に生きる』森田洋司編著(日経大阪PR企画出版部:2001年)Ⅳに「置き去り」が掲載されている。


この記事は松山大学学園報「CREATION」NO.189でご覧いただけます。

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