経営学部経営学科准教授
山崎 義広
YAMASAKI Yoshihiro
●略歴
1998年 明治学院大学法学部政治学科卒業
2014年 新潟大学大学院技術経営研究科修士課程修了(長期履修生)
2017年 新潟大学大学院現代社会文化研究科博士後期課程修了博士(学術)
2017年 新潟大学大学院技術経営研究科特任助教
2019年 駿河台大学経済経営学部経済経営学科講師
2022年 駿河台大学経済経営学部経済経営学科准教授
駿河台大学大学院総合政策研究科経済・経営学専攻准教授
2025年 松山大学経営学部経営学科准教授(現在に至る)
地域の価値はどう生まれていくのか
私が研究しているのは、マーケティング研究の一分野である「プレイス・ブランディング」です。日本ではかつて地域ブランドという考え方が広まり、特産品や観光資源などを活用した地域の魅力発信として広く認識されてきた経緯がありました。しかし本来プレイス・ブランディングとは、そうした地域産品の発信だけを指すものではありません。歴史や文化、そこに暮らす人々の営み、地域のなかで長い時間をかけて育まれてきた価値観、さらにはその土地がこれからどのような未来を描いていくのかまで含めて、地域全体の価値を捉えていく考え方です。そこで重要になるのが、地域に関わる多様な主体がどう関わり合っているのかという視点です。私はそのなかでも、地域に関わる様々な人や組織が、それぞれの立場からどのように地域に意味を見出していくのかに関心を持っています。そして、互いに関わり合いながら新たな価値を形づくる過程で、どのような関係性が築かれていくのかを研究しています。

地域の経済・社会的活動の積み重ねを地域プラットフォームがつなぎ、地域ブランドとしての新たな価値が生まれていく(山崎先生も著者の一人として参加した『地域プラットフォームの論理 ―プレイス・ブランディングに向けて』(2022年10月、有斐閣)より)。
価値の源泉は関係性のなかにある
企業のブランドづくりであれば、その企業自身が理念や方向性を定めながら、商品やサービスの価値を高めていくことができます。しかし地域は、それとは大きく異なります。地域は公共財的性格をもつ複合的な資源であり、誰か一人の意思だけで自由に方向づけられるものではありません。行政や企業、住民、地域団体など、多様な主体が関わりながら形づくられていくものだからです。そのため地域をより良くしていくためには、そうした多様な主体が互いにつながり、協働しながら新たな価値を生み出していくことが欠かせません。こうした事例の一つが、埼玉県横瀬町で行われている「よこらぼ」です。企業や個人、団体が地域課題の解決につながるアイデアや新しいサービスを、行政や地域に提案することができます。しかし通常であれば、こうした外部の企業や個人が自治体や地域住民と直接つながり、実際に取り組みを進めていくことは決して簡単ではありません。そこで横瀬町が地域そのものを新しい挑戦のフィールドとして開放して、提案内容をプレゼンテーションによって審査し、採択されたものは実際に町全体で受け入れながら実証実験へとつなげていきます。こうした協働のあり方は地域によって様々で、そのなかで人や組織がどのようにつながり、どのような関係性のなかから地域の価値が生まれていくのか。私はそうしたプロセスそのものにも強い関心を持っています。
現場での経験が研究の視点を深める
以前、博士課程時代に指導教員とともにある地域へフィールドワークに訪れた際のことです。行政の方に案内していただけることもあり、比較的スムーズに話を聞けるものだと安易に考えていました。しかし実際に足を運んでみると、公民館のような会場には十数人もの地域の方々がおり、場には独特な緊張感が漂っていました。こちらの気持ちを伝えることを重ねるなかで、幸いにも徐々に本音を聞かせていただけるようになり、地域の実情やミスマッチについて深いお話をいただくことができました。その経験を通して強く感じたのは、地域には外からは見えない複雑な関係性や、簡単には言葉にできない背景が数多く存在しているということです。地域のなかには、それぞれ異なる立場や役割があり、長い時間をかけて積み重ねられてきた歴史や感情が複雑に絡み合っています。誰かに伝えたいけれど伝えられない感情や、うまく表現できない思いに触れるなかで、地域を研究するということは、単に事例を調べることではなく、その土地に生きる人々の背景や関係性に向き合うことでもあるのだと実感しました。そのとき初めて、研究者として地域の話を伺うということには、大きな責任が伴うのだと気づかされました。こうした経験を通じて、人や組織がどのようにつながりながら地域に新たな価値を生み出していくのかという視点は、私の研究のなかでより大きな関心へと広がっていきました。多様な協働のあり方を手がかりに、地域に価値が生まれていく仕組みを、これからも考え続けていきたいと思っています。

今秋に刊行された『地域活性化のイノベーション』(千倉書房)に山崎先生も執筆者として参加。株式会社四万十ドラマと山古志地域の事例を担当し、地域活性化をイノベーションの視点から読み解く。





