松山大学法学部学術研究会・学術講演会—中央大学法学部教授・只木誠先生—

2025年10月3日(金曜日)、中央大学法学部教授・只木誠先生をお招きし、14時15分から松山大学東本館7階会議室2にて松山大学法学部学術研究会が、18時00分から松山大学カルフールホールにて松山大学法学部学術講演会が開催されました。

学術研究会では、「終末期医療における患者の自己決定-安楽死・尊厳死、自殺幇助の問題などを取り上げて-」を論題として、日本では、近時の終末期医療の充実・一般化に伴って患者の意識レベルを低下させる措置の実施による苦痛排除の例が増加し、もはや、いわゆる積極的安楽死事案の発生は想定しにくいと思われる状況であるところ、とはいえ緩和医療によっても肉体的苦痛を完全に排除することはできない場合があり、それは精神的苦痛においてはむしろ一層であると思われるのであり、その場合にはお、患者の事前の指示書に基づいて行われる尊厳死としての積極的安楽死の可能性は存するであろうと指摘して、終末期医療における患者の自己決定にまつわる議論の最新状況が示されました。また、このテーマにかかって、ALS患者に対する嘱託殺人事件判決を素材に、精神的苦痛に対する尊厳死の可能性についても検討がなされました。

学術講演会では、「刑事立法と刑法学-被害者保護、予防論などを取り上げて-」を論題として、政治や経済システムなどにおいて生じる混乱に社会が十分に対応できなくなりつつある現代においては、新たな危険の存在が人々の不安を増大させており(「不安社会論(危険社会論)」)、人々はこれら未知の危険を回避するため、より有効な施策の実行を政府・行政に求めるという傾向が強まっており、その一つの顕著な例として「被害者関連立法」の活性化が認められるとされました。その上で、この傾向のなかにあっては、法に使用されている用語を厳密に定義し、その立法による効果を適切に測定することが必要であり、その作業が正しく行われないところでは、重罰化、処罰の早期化、加害者に認められるべき権利の縮小という現象が一層進むであろうことが指摘されました。

合計約400名の学生・市民の方が出席した研究会・講演会は、有意義な学びの場となりました。
なお、研究会・講演会には、指定コメンテーターとして、大杉一之先生(北九州市立大学法学部准教授)にご参加いただきました。

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