FOREFRONT
マツダイ最前線

澤本 篤志 准教授
脂肪細胞の機能維持が健康寿命に関与するか
脂肪細胞は生体内において唯一、脂肪を蓄えることに特化した細胞です。過栄養状態では、脂肪細胞は過剰なエネルギーを脂肪として蓄積することで、拡張します。一方、慢性的な肥満状態では、脂肪組織にコラーゲン線維などの細胞外マトリックスが過剰に蓄積し、硬化する(拡張性が失われ、脂肪貯蔵能が低下する)ことが知られています。これを〝脂肪組織の線維化〞といい、本来、脂肪組織に蓄えられるはずであった脂肪は肝臓や骨格筋などへ異所性脂肪として蓄積され、様々な代謝性疾患を引き起こす要因となります。このことから、脂肪細胞の正常な機能を維持すること、すなわち脂肪組織の線維化を抑制することは、健康寿命の延伸に寄与することが期待されています。そこで、脂肪細胞の機能維持に関与する物質を探索し、その効果と作用メカニズムについて細胞および個体レベルで解析を試みています。
具体的には、T細胞活性化抑制作用を指標としたアッセイ系を用いて植物由来成分や既存医薬品をスクリーニングし、候補となる物質を選定します。その後、培養細胞を用いて、選定された候補物質が脂肪細胞の機能に与える影響を評価します。一定の効果が期待される候補物質を見出せた場合、その物質を肥満モデルマウスに投与し、その効果について解析を行います。