
望月 雄介 准教授
談話研究がサッカー審判界へ与える影響
最近発表した論文に、「レベル別に見るサッカー審判員の視点と思考-発話プロトコル分析の結果から-」があります。サッカーの試合において、審判員はどの部分を、どの視点から、どう見るのか、審判員のレベルによって視点や思考にどのような違いがあるのかについて、審判員たちの「ことば(談話)」から論じています。私自身がサッカー2級審判員と、審判2級インストラクターとして活動していたこともあり、審判員の級によってファウルの判定にどのような違いがあるのかについて疑問を持ったことが、この研究のきっかけでした。今後、審判員として自分にはどのような力が必要だろうか、また、インストラクターとしてどのように指導できるだろうかと常に考えていたので、自分の武器である言語学からその疑問にアプローチしてみようと思いました。
この研究では、1〜4級の各審判員に試合の映像を観せ、その中で自由に語ってもらい、級によって発話の内容がどう違うのかを検証していきました。4級では、「すごい」「うまい」といった、審判以外の第三者視点からの発話が特徴として見られ、3級では主審視点からの発話や、説得力を持たせる判定を下すにはどうすれば良いかという発話が見られました。2級はフィールド全体を見る視点を有し、ポジショニングや戦術に関わる発話が見られ、1級になると、試合全体を見て選手の動きや試合の展開を予測し、事象が起これば時間を遡って検証するといった発話が特徴的でした。
この結果として、審判員のレベルによる発話内容の傾向や、レベルが上がればどの部分で発話の内容が変わっていくのかということを「動的」に捉えることができました。この研究はどのように審判員を育てるのかといった審判教育に貢献できると考えられます。さらに観客も審判員の視点や思考を知ることで、担当審判員を尊重することができるようになる可能性もあります。