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2016年09月07日
学術・研究在学生の方社会人の方研究者・企業の方法学部

地域社会における高度専門教育機関の役割―法学部学術研究会―

平成28年8月5日(金曜日)15時30分から、本学文京キャンパス東本館7階にて、法学部主催学術研究会が開催された。近畿大学法科大学院院長である山本雅昭氏を講師に迎え、「地域社会における高度専門教育機関の役割―地域における『知の拠点』の在り方」と題して講演が行われた。

山本氏は、まず「法科大学院修了生の活動状況に関する実態調査(概要)-”法科大学院”と”あなた”が拓く 新しい法律家の未来-」(文部科学省:平成28年5月19日)に基づき、法科大学院制度の現状が示され、法科大学院制度導入の前提となった「司法制度改革審議会意見書」(平成13年6月12日)に言及した上で、現在でも司法制度改革は進行中であると述べられた。「意見書」において示された21世紀の日本社会の姿は、法化社会であり「究極的に紛争はすべてが裁判所に持ち込まれ、あるいは持ち込まれることを前提に準備がなされなければならない社会」と指摘した。しかし、平成14年3月19日に、「平成22年頃には司法試験の合格者数を年間3000人程度とする」という閣議決定がなされたが、平成25年7月16日の法曹養成制度関係閣僚会議決定において、上記の方針は、事実上放棄されたとし、「法化社会は到来しなかったのか?」という問題提起をした。
 この点に関して、山本先生は、公正取引委員会の審判制度が廃止された(平成25年12月)点(不服がある場合は、裁判所に提訴する制度へと変更)及び公正取引委員会が「企業における独占禁止法コンプライアンスに関する取組状況について―コンプライアンスの実効性を高めるための方策」(平成22年6月)を公表した点に言及し「紛争が裁判所に持ち込まれることを前提に準備がなされなければならない社会」に移行しつつある点を指摘した。そして、これを裏づける資料の一つとして、経営法友会(インハウスローヤ―により組織されている)の実施したアンケートを示された(アンケートによれば、法務担当者数が増加した等が示されている)。
  これを踏まえて、「法律学に関する高度専門職業人」養成について、単に人材の養成だけではなく、直接的に地域社会へ働きかけることを視野に入れる必要がある時代となった旨を指摘した。その上で、近畿大学法科大学院の取組について言及した。近畿大学法科大学院が位置する東大阪市は、中小企業の集積地であり、中小企業の法務に明るい人材の養成が地域社会にとっては非常に重要な意義を有する。そこで、カリキュラムにおいて、近隣の中小企業法務を念頭においた「ビジネス法務実習」を設置しているほか、修了生向けの継続教育として、地元中小企業を対象とした無料法律相談会において、ベテラン弁護士を主任弁護士とし、新人弁護士が補佐として業務にあたることによってスキルを向上させる取り組みを行っている。また、近畿大学法科大学院主催の講演会では、グローバル化した取引環境を踏まえて「特許実務の現場」というテーマで行われており、さらに、東大阪市との連携も行われている。
 最後に、地域社会における高度専門職業人養成においては、学生には(1)地域社会において何が問題となっているか、(2)問題を解決する方策は何か、(3)その方策を実現するために、何が必要となるかの順序で考えさせる必要があるという指摘がなされた。

講演後の質疑応答では、活発な意見交換がなされ、本学が設置を進めている法学研究科にとっても大変示唆的で意義深いものとなった。

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