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2025年06月09日
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孟子敏教授が蒲松齢研究の新発見を発表! 新著で貴重な「聊斎俚曲」を初公開
この度、本学人文学部の孟子敏教授が、中国清代の文豪・蒲松齢(ほしょうれい)に関する画期的な研究成果を発表しました。新著『蒲松齢俚曲『醜俊巴曲』考論 釋文 注釋』(朋友書店、2024年6月25日刊行)では、著者名「吉澤敏之」としてこれまで未公開だった「聊斎俚曲」の一種である『醜俊巴曲』の全本・抄本・孤本を写真版で初公開しています。
「聊斎俚曲」は、蒲松齢が著したとされる15種の作品群で、中国明清文学や近世中国語研究の基礎資料として知られています。しかし、これまで公刊されてきた作品には真贋が混在しているとの指摘があり、特に『醜俊巴』は未完成作品の一部ではないかという説や、蒲松齢の真作ではない可能性も示唆されていました。孟教授自身も2021年の論文で、刊行された『醜俊巴』が蒲松齢の著した作品でない可能性を示唆していました。
そうした中、孟教授は2021年3月に慶應義塾図書館で、従来の『醜俊巴』とは全く異なる約3万字にも及ぶ『醜俊巴曲』を発見しました。これは全24回からなる完璧な戯曲の台本であり、今回の新著でその全貌が明らかになりました。
この新発見により、現行の『醜俊巴』が贋作であることが判明し、真の『醜俊巴曲』の姿が確認されました。孟教授は、版本の変遷、淄川方言、曲牌、俗字、方言文字、登場人物など多角的な考察に基づき、この『醜俊巴曲』が蒲松齢によって康熙四十四年(1705年)春夏前後、彼が66歳の時に創作された作品であることを解明しました。
本書は全編中国語で執筆されており、日本の学術界のみならず、中国文学史や中国口語史、そして「蒲学」(蒲松齢学)といった国際的な研究分野において、極めて重要な資料となることが期待されます。