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2021年11月16日

がん治療で誘発される 口腔粘膜炎に対し、動物モデルを用いて治療効果を検証する

患者のQOLの向上と治療の選択肢を広げる

がん治療で口腔粘膜炎が発症するメカニズムについては、ある程度明らかになってきています。がん細胞の遺伝子に限局して薬や放射線で攻撃しようとしても、どうしても周辺の正常な細胞も傷ついてしまい、細胞が傷つくとサイトカインなど炎症を引き起こす物質が細胞から放出されます。さらに炎症は細胞の入れ替わりが活発な粘膜器官に出やすいという傾向があります。
 口腔内は約2週間で細胞が入れ替わるという、人体のなかでも新陳代謝の盛んな器官のため、必然的に抗がん剤や放射線による影響を受けやすい上に、もともとがん治療で免疫が下がっているため、炎症が進むと局所感染を引き起こすリスクが高まります。これが重篤な口腔粘膜炎が発症する理由です。口腔粘膜炎が重症化して食物を経口摂取できなくなると、全身状態が悪くなり、治療を中断しなければならない状態に陥ることも。そうなると、本来の目的であるがん治療も遅れ、場合によれば治療をストップせざるを得ない場合もあります。これは、患者さんにとっては副作用に苦しむだけで、本来の治療は進んでないというデメリットしかない状態なのです。
 しかし、口腔粘膜炎の発生メカニズムはある程度分かってきているとはいえ、副作用を解決する方法はまだ十分に分かっていません。今までの研究から、細胞が傷つくのを防御する、炎症が起こるのを抑制する、傷ついた組織の回復を早める、という段階に応じた対応が必要と考えられるため、ハムスターやマウスなどの動物に口腔粘膜炎のモデルを作製し、その動物モデルに対して既存の様々な薬や化合物を用いることで治療効果や作用メカニズムの検証を行っています。ハムスターもマウスもとても可愛らしい動物ですが、医療の進歩には実験動物の存在が不可欠。動物たちの貴重な命を無駄にしないよう、日々研究に打ち込んでいます。

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