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2025年01月31日

澤本 篤志 准教授

老化と寿命を制御する新たな仮説を検証

現在、候補に挙がっている物質は、チペピジンという日本で開発された非麻薬性鎮咳薬です。培養した脂肪細胞を用いてチペピジンの作用を評価したところ、脂肪前駆細胞から脂肪細胞への分化過程で産生される細胞外マトリックスの産生抑制効果を示すことが分かりました。実際に、チペピジンを投与した肥満モデルマウスの脂肪組織では、細胞外マトリックスの過剰蓄積が抑制され、脂肪細胞の拡張性が維持されていました。さらに、肥満に伴う代謝調節異常の改善効果も確認できました。これらの研究結果は、チペピジンが脂肪組織の線維化抑制作用を介することで、健康維持に寄与する可能性を示唆しています。チペピジンはすでに承認を得ている医薬品なので、臨床研究に協力してくれる医師が現れることを期待しています。
 肥満が健康障害を伴うかどうかは、脂肪細胞の正常な機能が維持されているかどうかで左右されると仮定して研究を続けています。一方で、太りやすさの個人差を決定づける因子は何か、性差による脂肪蓄積能力の違いはなぜ生じるのか、といった脂肪細胞の生物学的意義については不明な点が多く存在します。今後は、これらの未解明な点を明らかにしたいと考えています。
 日本は高齢者人口の増加が著しく、現在、健康寿命の延伸に資する物質の探索が盛んに行われています。脂肪組織の機能維持が老化・寿命を制御するという仮説を検証することで、ヒトの健康寿命延伸に向けた新たなアプローチ法の確立が可能になると信じています。

「New Perspective in Adipose Tissue: Structure, Function and Development」は、脂肪細胞の研究に携わる研究者ならず読むバイブルのような存在。チペピジンが脂肪細胞に与える影響に関する研究成果は、2024年3月に国際学術誌「The FASEB Journal」に掲載された。

この記事は松山大学学園報「CREATION」NO.222でご覧いただけます。

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