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2019年05月08日

雇用ルール成立の背景にある合意形成を実証的に研究する

制度の成立背景にある労使間の合意形成を検証

西村准教授が著書の中で示した図。プロフェッショナル労働市場は雇用ルールの性質にしたがって上図のようにタイプ分けできる。

医療系労働市場の現状を分析するために統計データを用いるのですが、統計データでは〝量〞はわかるが〝質〞がわからないという問題が見えてきました。そこに現れている事象の背後にある、制度やルールの成立過程について理解する必要があると気づいたのです。そこで、病院でのストライキや労働争議の記事が掲載されている労働組合新聞や、国会議事録、医師会や経営者の会が発行する会報や資料を調べ、どのように合意形成がされ、制度がつくられてきたかを検証していきました。
 国民健康保険法が改正され、1961年には国民皆保険体制が確立されました。それに伴って患者は増加するものの、当時は制度に見合う現場の人員も設備も整えられていない状況でした。戦後、医療業界の労働条件の改善運動は労働組合から始まったのですが、労働組合の幹部たちは「国がダメだ」と主張してきました。しかし実際には、当時の官僚は国会で医療業界の人手不足や設備不足について発言していて、組合と対立していないのです。また国立病院の給与体系がその他の病院へと波及していくのですが、これについても組合幹部は否定的な評価を下してきました。
 昔は大病院で勤務医からスタートして、ゆくゆくは独立・開業という流れがありました。しかし勤務医で一生を終える人が次第に増えてくると、職場環境が重要になってきます。1960年代から医師会は力を増してきましたが、そもそも開業医の集団なので勤務医の境遇にはあまり関心がなく、職場環境の改善には繋がりませんでした。また医師や看護師は労働者というより、社会への奉仕者としてみなされがちになり、それゆえ労働環境は異常な状態となってしまったままなのです。
 

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