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マツダイ最前線
FOREFRONT マツダイ最前線
2021年04月13日

法律の理論家として中立かつ多角的に物事と法律を俯瞰し必要な提言を行う

無罪判決後の上訴が憲法に抵触する可能性

日本の裁判の仕組み(戦前と戦後の違い)

戦前は裁判所が捜査官に命じて捜査をさせて、その内容をもとに裁判を行うという仕組みになっていました。戦後は警察・検察が捜査し、検察が起訴・不起訴の権限を持ち、裁判所は証拠を裁判の場以外では知ってはいけないという中立の立場に変わっています。
 現行の日本の刑事訴訟法は、外見的にはアメリカと同じようなルールですが、運用に関してはかなり慎重です。アメリカの場合、あっさり逮捕してあっさり裁判にかけて、あっさり無罪になるということがよくあります。一定の基準に達していれば、逮捕・起訴・裁判を行いますが、その基準が日本より低いのです。
 日本もアメリカも〝合理的な疑いが入る余地のない確信〞という表現を使いますが、日本の場合はその基準が非常に高く、よほど容疑が固まらない限り逮捕や起訴はしません。その代わり、有罪の確信を持って起訴するため、何があっても有罪に持っていこうという傾向があります。同時に官に対する信用が強いため「彼らがやっているのだから間違いないだろう」というところがあり、無罪判決等でそれが裏切られたときは強く批判されます。
 基本的には今の運用で日本の実情に合っているため、大きく変えなくていいと思っています。もっとも、場合によっては素人も裁判員として判断に加わり、当事者の言い分を尽くして出された公判の結論は尊重されるべきです。極端に偏った法解釈や量刑不当は公平性の問題があるので、有罪であっても上訴する理由があります。しかし、無罪、つまり処罰しないという結論に対し上訴、再審査が許されるとなると、公判が無意味になりかねません。「……既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない(日本国憲法39条)」に反し「一度で結論を出してもらう権利」の侵害になる、というのがアメリカ流(合衆国憲法第5修正)です。日本の通説や判例は公判段階の無罪は未確定なので上訴も許されるといいますが、これには問題がある、と私は考えています。

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