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2022年11月28日

特別刑法における条文の解釈方法を検討することで社会の秩序形成に役立てる

違法となる境界線が解釈により修正される

一般刑法において刑罰の対象となるのは、〝故意に行われた〟ということが前提として必要です。一般刑法の前半には条文の解釈の仕方について書かれていて、特別に定められている場合を除き、〝過失による結果は処罰されない〟ことが原則と定められています。つまり、盗む気はなかったのに、コンビニでうっかり間違えて他人の傘を持ち帰ってしまったような場合は、一般刑法上では犯罪とは認められません。そして現在の法学界では、刑罰が定められている条文(=特別刑法)に対しては、行政法規などの個別の法規違反であっても、傷害罪や詐欺罪といった一般刑法と同一の解釈方法を取らなければならないとするのが多数的な見解となっています。
 しかし現実では、特別刑法の解釈に修正が加えられています。先ほど挙げた〝船舶は海に油を流すことを禁ずる〟と規制する条文の場合、船が故障して油が流出したとき、船主は「故意ではなく、故障なのだから仕方がない」と主張するでしょう。しかし裁判所では、この法律の主旨は〝海洋保全のため〟なので、一般刑法の解釈の原則は修正しなければいけない(故意でなくても罪になる)という立場が取られています。
 違法薬物を運ぶ係は、薬物名を直接出さずに符ふちょう牒や隠語で取引をしている場合がほとんどでしょう。その場合〝麻薬を運んでいるつもりが覚醒剤だった〟など、思っている薬物と違うものを運んでいた場合は罪になるのか? という議論が出てきます。一般刑法だと〝故意に〟という要件が必要なので、中身を知らないまま運んでいるのなら犯罪にならないという解釈が成り立ちますが、実際には〝人体に有害なものを、なんとなく違法な薬物とわかっていて運んでいるのだから有罪になる〟と判断されています。つまり、特別刑法のなかには状況に合わせて解釈の方法が変えられている場合もあるのです。

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