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FOREFRONT マツダイ最前線
2023年09月07日

限られた史料から三貨流通動向を検証し、近世庶民の経済的発展の実態を明らかにする

小額貨幣の意義を改めて強調する

長年にわたる研究によって、17世紀末〜19世紀後半で三貨全体の在高が8倍前後に増加したこと、金銀貨の多くが小額面に改鋳されたこと、辺境地域では高額取引でも銭貨が多く使用される場合があったことなどが新たな知見として得られました。また〝銭は端数処理に使われていたもので、金銀貨の補助的な貨幣に過ぎない〞とされてきたのを、〝人口の8割以上を占める農民・庶民の経済的地位向上に不可欠な貨幣だった〞という解釈を得られました。
 歴史学は未来学であり、その意義は「過去のあゆみから教訓を得て現代に活かす」ことにあります。私の研究は、従来の貨幣史における論争史にはあまり深入りせず、貨幣がどのように使われてきたかという事実の発見の報告にとどまります。しかし、貨幣が経済発展にどう貢献したかということで、常に問われているのは〝貨幣に関する信用・信頼〞です。貨幣動向について事実関係を明らかにすることは、例えば暗号通貨への対処が不可避な現代の金融政策にも直接つながってくることなのです。

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