FOREFRONT
マツダイ最前線

新井 雄喜 准教授
資源回復に取り組むタイ漁民の事例
長年かかわっているNGOの知人から、タイでの興味深い取り組みについて聞いたことが、タイでの研究に取り組むことになったきっかけです。タイで漁獲されているカニは、高級食材として取引されるために乱獲されて激減。そこでカニ漁に収入を依存する漁民たちが「資源を増やそう」と、抱卵したメスのカニを生簀等で飼育し、孵化させた稚ガニを放流することを始めました。マングローブや海草の植栽をしたり、小型のカニは獲らないなどの持続可能な資源利用のためのルールをつくったり、付加価値をつけた加工品をオンラインで販売したりするなど、海の環境を守りながら収入を増やす努力をしてきました。漁師たちは「カニが増えてきた」と認識し、収入も戻ってきましたが、本当にその取り組みによって効果があったのか、まだ本格的な検証はされていません。現場の状況に合った漁業資源の回復と貧困問題の解決方法を開発することを目的として、インタビューやアンケート調査を主体に、まずは現場を知るためのアプローチをしているところです。まだタイには3回しか行けておらず、研究はまだまだこれからといったところです。どのような仕組みや施策をつくれば皆が協力し合ってルールを守り、持続可能な漁業ができるのか、定量・質的なデータをもとに検証しようとしています。同時に、稚ガニを放流することで本当にカニの漁獲量は増えるのか、自然環境に悪影響を及ぼすことはないのか等、様々な側面から検討する必要があります。研究チームには経済学者や生態学者など様々な分野の研究者がいて、多角的な視点から研究しています。