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2024年02月02日

制度の運用開始から一貫して追い続ける個別的労使紛争解決手続

個別的労使紛争のADRを総括的に検証

元々、集団的労使紛争のみを扱っていた都道府県の「労働委員会」が、2001年4月に、「個別的労使紛争のあっせん」を開始しました。学識経験者らで構成される都道府県労働局の「紛争調整委員会」の運用も、同年10月にスタートしました。これらの制度の処理実績は、紛争調整委員会への申請が年間4000件程度であるのに対し、労働委員会への案件は2~300件程度しかありません。これは、労働委員会の事務局が県庁所在地にのみあるのに対して、紛争調整委員会は、労働局の配下で県下全域をカバーしている労基署やハローワーク等の労働相談窓口のネットワークを有することによるものと思われます。ハローワークが、労使紛争を顕在化させる側になることの多い労働者にとって馴染みのある機関であることも、紛争調整委員会への申請が多くみられる要因となっていると考えられます。
 ADRで一番有効に機能しているのは、裁判所の「労働審判制度」です。裁判所で行われますが、訴訟ではなく、労働審判委員会で迅速に審理・判断をし、積極的に和解のための調停作業を行い、短期間で紛争を解決に導く優れた制度になっています。しかし、原則的に代理人として弁護士を依頼する必要があり、着手金が、普通の労働者にとってはかなり高いハードルになっているという課題があります。それでも、弁護士が不要で、かつ無料で利用できる労働局の紛争調整委員会や労働委員会のADRの解決率が30~50%台に止まっているのに対して、労働審判制度では80%程度にもなっており、非常に高い有効性を有しています。
 民間機関もADRを設けており、労使紛争に関与するのに最適の専門的士業の組織である社会保険労務士会は、個別的労使紛争の処理に特化した唯一の全国レベルの「社労士会労働紛争解決センター」を展開し、日本の労使紛争処理制度の一翼を担うようになりつつあります。弁護士会も、紛争解決センターにおいて、民事紛争解決サービスの一環として、労働関係民事紛争を扱っていますが、紛争解決センターが設置されていない県が、全国で3割ほどもあります。

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