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2022年04月13日

ひきこもり当事者の声を‟聴き”存在を受け止めることから「生きる」場がつくられる

「存在の無視」が語れなさにつながる

自分の声が‟正しく聞き届けられていない”ことについて、当事者はどのように感じているのでしょうか。近年は当事者自身が表舞台に立って発信する活動が盛んになっているのですが、ある集まりで「誰に対して発信しているのか」という問いについて意見交換が行われたとき、その場にいた皆さんは「過去の自分に向けて発信している」と答えたそうです。自分のことをうまく語れないために理解を得られず、冷たく扱われてきたことへの悔しさや悲しさ、自分への不甲斐なさが当事者発信の根底にあるのだと思います。‟声が聞き届けられないこと”は、自分が生きてきた時間や、自分の存在そのものを無視されているという苦悩にまでつながってしまうのです。当事者が自分の経験や思いについて確信を持って語れるようになるには、周囲の‟聴く耳”が育つのを待たなければいけないのです。
 軽々しく「あなたの辛さや苦しさは分かる」などとは言えませんが、「自分は生きていてはいけないのではないか」と思いながら生きていくのはあまりにも悲しく、また生きることはそんなに過酷であってはならないと思います。「ひきこもり」に限らず、どんな支援においても‟当事者の頭を飛び越えないこと”がもっとも重要です。「ひきこもり」の研究を通じ、共感を振りかざすことの危うさ、特定の価値観で人間をジャッジすることのおかしさに気付きました。これからも多くの人をひきこもらせるような世の中のあり方に対して、問題提起をしていきたいと思っています。

2021年11月、ひきこもるという経験と回復の定義を明らかにしようとする『「ひきこもり」から考える―〈聴く〉から始める支援論』を発刊(中央)。ほか、著書・共著あり。

人文学部社会学科教授
石川 良子 ISHIKAWA Ryoko

略歴

2000年3月 中央大学文学部社会学科 卒業
2000年4月 東京都立大学大学院社会科学研究科修士課程 入学
2002年3月 東京都立大学大学院社会科学研究科修士課程 修了[修士(社会学)]
2002年4月 東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程 入学
2008年3月 東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程 修了[博士(社会学)]
2010年4月 日本学術振興会特別研究員(~2013年3月)
2013年4月 松山大学人文学部准教授
2020年10月 松山大学人文学部教授(現在に至る)

この記事は松山大学学園報「CREATION」NO.213でご覧いただけます。

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089-926-7140

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