クリックするとメニューが開きます
scroll
マツダイ最前線
FOREFRONT マツダイ最前線
2017年08月28日

歴史はどのように語られるのか、歴史とは一体何なのかを文学を通して探究する

文学を研究するとは

文学研究は語学力と読解力に裏打ちされた総合力、そして、広範にものを観る目を必要とする分野だと、私は思います。前項で触れたように、「ディケンズと歴史」を研究する場合、彼の歴史小説を読むだけではなく、当時の一般的な歴史意識など、様々な要素を射程に入れて分析します。ディケンズの歴史意識を抽出するために、ディケンズの全体像を把握する必要もあります。例えば、彼の社会改革者としての側面や、精神分析の父フロイトを感嘆させたほど、人間心理に対する洞察力を持っていた点などに注意を払いながら、彼が過去をどのようなものだと考えていたのかを分析するのです。ディケンズのそのような特徴を実証するときに、同時代の社会状況や人間心理に対する一般的な認識について理解しておかなければならないことは言うまでもありません。
 ちょっとした言葉の機微に気づくのは感受性ですが、それを研究へと深めていくためには論理性が必要です。空想小説的な読み物であっても、それが読み継がれているのであれば、そこには何らかの論理があるはずです。その糸口に気づいた後、隠された論理を探り出し、論文として組み立てるために、研究者は論理的でなければなりません。教育者としての立場から言うなら、授業で文学を扱うことは、視野が広く論理的な人を育てることに通じると思います。

人文学部教授
矢次 綾 YATSUGI Aya

略歴

2008年 博士号(文学、名古屋大学)取得(宇部工業高等専門学校在職中)
2011年 松山大学人文学部教授
2015年9月~2016年9月 King’s College London 客員研究員

最近の主な業績

“Gaskell’ s Historical Novels: Reactions to the Period,” Gaskell Journal(UK)24(2010)、「『二都物語』―孤独な群衆の暴力性」『ディケンズ文学における暴力とその変奏―生誕二百年記念』(大阪教育図書、2012)、“Dickens’ s Women Characters: Subversive Responses to the Difficulties in Marriage,” Dickens in Japan: Bincentenary Essays(Osaka Kyoiku Tosho, 2013)、「ギャスケルとイングランド革命―『モートン・ホール』」『没後150周年記念―エリザベス・ギャスケル中・短編小説研究』(大阪教育図書、2015)、“Sleeping Beauty and the Evil influences of Fairy Tales in Cousin Phillis,”Evil and Its Variations in the Works of  Elizabeth Gaskell(Osaka Kyoiku Tosho, 2015)

この記事は松山大学学園報「CREATION」NO.194でご覧いただけます。

PAGE 1 PAGE 2 PAGE 3

このページに関するお問合せは下記までお寄せください。
広報課
電話
089-926-7140

RECOMMEND おすすめのページ

PAGE TOP