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図書館

第15回松山大学図書館書評賞

受賞者<2015(平成27)年12月1日発表> 

最優秀書評賞:該当者なし

該当者なし

優秀書評賞:高須賀 捺美さん(人文学部社会学科1年)(※)

生きるチカラ 〔請求記号:081/S25/549〕
著者:植島啓司 出版社:集英社 出版年:2010

人生とは何だろうか。私は、人が生まれて死ぬまでの期間のことだと考えるが、人によってさまざまな考え方ができるだろう。しかし、人生をどう考えようと私たちの人生は1度きりなのである。そして、いつ終わりが来るのか誰にもわからない。だから、人は、幸せな人生を歩みたいと願うのだろう。では、幸せな人生とはいったいどのような人生なのか。この本は、幸せな人生とは何か、そもそも幸せとは何なのかについて考えさせられる1冊である。
 人生には選択を迫られることが多々ある。どちらを選べば自分は幸せな人生を歩めるのかと頭を抱えることもあるだろう。そんな人にぜひ読んでほしいのがこの1冊である。この本では、その選択に対して、自分の選んだ答えが正解だったのか誤りだったのかそんなことはすぐにはわからない、そんなことは自分次第でどちらにでもなり得るということが述べられている。今後の人生を左右するような選択を迫られている人にとって心が軽くなる1冊となるのではないだろうか。これは、幸・不幸についても同じことが述べられている。物事は今ではなく、その後がとても大事なのである。また、幸せであると考えることは人によって違う。だから、お金持ちの人が必ずしも幸せだとは限らないし、貧乏な人が必ずしも不幸だとは限らない。幸せな人生を歩みたいと願うならば、そう思えるように自分で仕向ければよいのではないだろうか。
 人生は1度きりだが、生き方は1つだとは限らない。日本では、1人の人が1つの仕事に就き、働くというのが当たり前となっているが、果たしてそれが幸せな人生といえるのだろうか。筆者は、人間の人生とはとても短く、あっという間に終わってしまうものだから、欲張っていろいろな人生を生きてみるべきではないかと述べている。それならば、多くのことに挑戦して人生を何倍も楽しむ方が幸せといえるのではないだろうか。
 本書は、このように人生のヒントが多く語られている。たった1度きりの人生を幸せなものにしたいと願う人にぜひ読んでほしい。
※ 高須賀さんの「高」ははしごたか

審査員による講評

審査委員 法学部教授 村田 毅之

「生きるチカラ」は、宗教人類学者である植島啓司氏の書であり、生活を豊かにする「生きるチカラ」について、具体例を挙げて平易に書き、生き方の指針を読者に示しています。そういった内容を、そのまま素直に受け取り、高く評価し、正確に言い換えて、書評を読む人に伝えています。
 人生をいかに送るかについて、生涯、悩み無く過ごせる人は稀有であることからするならば、この書評を読んで、この書を手にしてみたいという衝動に駆られる人は少なくないものと思われます。

優秀書評賞:山本 海斗さん(人文学部社会学科1年)

地方消滅 東京一極集中が招く人口急減 〔請求記号:081/C2/2282〕
著者:増田寛也 出版社:中央公論新社 出版年:2014

過疎化という言葉を知っているだろうか。過疎とは人口減少のために一定の生活水準を維持することが困難になった状態のことである。この本は過疎化に伴う地方都市の消滅。そしてそこから生まれる人口集中などの社会問題について様々な面から考察されている。
 本書では過疎化の原因の一つとして人口移動が大きく取り上げられている。筆者は人口移動の例としてバブル時代に都市部と地方で経済力の差が生じたことや、2000年以降の円高の影響で、若年層を中心に都市部から地方へ人口が流入したことを挙げている。都会での暮らしに魅力を感じるから、都会の方が生活しやすいなどという単純な理由ではなく、経済的な理由がしっかりと述べられている点は読者を納得させるであろう。
 また本書では人口の都市部流入による過疎化を防ぐための対策法が書かれている。例えば若い年代層における教育として稲刈りや田植えなどの農業体験をさせ、地方の農産漁村に若者を惹きつけること。また将来地方の住宅を取得した者に対し税制上の優遇措置を講じることが有効であることなどが述べられている。
 この本のタイトルは『地方消滅』である。名前だけを聞くと日本の地方が消滅してしまう危険があるということをシビアに訴えている印象がある。しかし本書では筆者の考えをもとに、地方で暮らす魅力が伝えられている。それは将来の私たちの生活に向けて何かヒントを与えているような気がする。
 地方の人間からすれば、都会で生活することは憧れであるかもしれない。たくさんのビルに囲まれるだけでも世界観が変わる。ものは揃いやすく、病院などの医療機関も充実している。しかし地方ならではの良さもたくさんある。静かな環境で暮らすためストレスも少ないだろう。また店が混雑しないためのんびり買い物や食事が楽しめる。場所によっては家庭菜園が楽しめるのも魅力の一つかもしれない。
 この本を読み終えたころには将来充実した生活を送るための知識が得られるに違いない。地方に住む人間ならば是非読んでみるべきだ。

審査員による講評

審査委員 薬学部教授 牧 純

都会人も、地方に暮らす人々も大いに考えさせられる書名である。私自身がもともと九州の田舎出身で、東京の生活が長く、現在地方都市で暮らしているので、具体例で以って関心のもてるテーマである。
 マスコミ・新聞関係で「地方消滅」が言われて久しいし、現在もさまざまな表現で懸念する声が聞かれる。確かに「少子高齢化」などと相俟って現代日本の抱える大きな問題となっている。受賞者もきっと都市と地方の比較論を意識し、自身の活動と居住の地を考えつつ読んだに違いない。
 真摯に人生を捉えようとする心意気の感じられるこの書評は、要約も簡潔にして具体的であるし、自身の考え方も当を得ている。文体がしっかりしていて、その内容が評価者たちに伝わる。結論も明快である。読んでいてすっきりする書評である。すなわち、起承転結の展開のメリハリもきいており、学生にしては整然とした文章であると思われる。
 以上のような構築により執筆者の論旨が端的に伝わってくるこの書評は、今回の優秀賞受賞に値すると判断された。

佳作:額田 麻歩さん(薬学部医療薬学科5年)

応援する力 〔請求記号:081/As/438〕
著者:松岡修造 出版社:朝日新聞出版 出版年:2013

真剣だからこそ、ぶつかる壁がある。
偶然目にした暦の言葉にはっと我に返った。その時、まさに私は高く聳える壁の前に立ちすくんでいる様な心境だった。肩に力が入り過ぎて上手く言葉が出てこない、気合が入り過ぎて失敗をしてしまう、努力が空回りをしているようで途方にくれていた。
あと一歩を踏み出す勇気がほしい、そんな気持ちで私は言葉の主の著書を求めた。
 書架から選んだのが、この「応援する力」だ。
本書は「修造、自分を信じろ!」という声援に震い立ち、劣勢からウィンブルドンベスト8への足掛かりを掴んだ松岡修造が“応援上手”“応援され上手”になる為にはどうすれば良いのかを教えてくれる心強い本である。
4つの章から成り立っており、まず応援が与える力の凄さについて語られている。
次章では著者が浅田真央さんや高橋尚子さんたち一流アスリートを応援してきた中で、試練を乗り越える方法やコミュニケーション能力を磨く理由など気が付いたことや得られたことについて、第3章は親しいゆえに難しい家族や友人への応援の仕方、最終章では毎日の暮らしへの応援の上手な取り入れ方について、正確なストロークと軽快なフットワークで一気に読者を取り込み、あっという間に最終頁まで読ませてしまう。
 とりわけ私の心に響いたのは、本気で頑張っている人には「頑張れ」ではなく「頑張っているね」と言ったほうが良いという事だ。
そうすることで、あなたの努力をちゃんとみて応援しているよとさりげなく伝え、相手の心に沿った上手な応援が出来ると示唆している。
テレビでもよく目にする著者の圧倒的な明るさや優しさの源が明かされたようだった。
しかも、一様に声高に応援している自分を伝えようとすることがベストではなく、心静かに言葉ではなく、その人をただただ信じてじっと待つのも立派な応援だとの言葉に、声に出さなくても応援、苦言も応援であることに気付かされた。
 本書は巷に溢れる自己啓発本よりも熱く濃い。
「される人にも、する人にも奇跡を起こす、応援の流儀!」と銘打たれた通り、読み進むうちに松岡修造流のパワーが注入されるようだが、本当にここまで熱くなれるのだろうか。
しかし、秘めたる熱意を持って導火線にやる気という名の火をつける事が出来れば、内なる熱意に突き動かされ、また、複雑に絡む導火線の先に新たな目標となる夢への一歩を踏み出す勇気が追加されるのではないだろうか。
日々小さな目標から繰り返すことが、きっと大きな夢へと発展していくと思わせてくれる本だ。
 ラスト・リメンバー・ファースト。
「君なら出来る!」という著者の言葉を胸に自分を信じ“今ここにあること”に全力を尽くそう。
「すべてを出し尽くせ!」
 日本で一番応援が上手な男の叱咤激励が、目前の試練と向き合い高く険しい壁を乗り越えようとする時、そっと背中を支えてくれるような一冊だ。

審査員による講評

審査委員 法学部教授 村田 毅之

「応援する力」は、元プロテニスプレイヤーの松岡修造氏の書です。写真も掲載し、たいへん読みやすい体裁になっています。
 この書を手にしたきっかけから、内容の紹介まで、元気が伝わってくる文章で描かれています。とくに感銘を受けた言葉や、テレビ等で見られる松岡氏の言動をも交えて、書評の読者を、松岡修造ワールドに引きずり込む明快な文章が、テンポよく、簡潔に展開されています。

佳作:野間須 萌乃さん(人文学部社会学科1年)

世界の宗教どの教えが優れているのか? 〔請求記号:160/K30/1〕
著者: シャフィック・ケシャヴジー 小林修 訳 出版社:徳間書店 出版年:2000

「宗教オリンピック競技大会の開会を正式に宣言する。」
 遠い昔の遠い国に王に支配されている国があった。王は国民を一番に考え、よりよい政治のため〈賢者〉と〈道化師〉の意見に耳を傾けつつ統治していた。しかし、国内では嵐を予感させる気配が潜んでいた。
 ある晩、三人はそれぞれ予言めいた夢を見て、三人は困惑した。そののち、国が抱える問題に直面し、国民になによりも欠けているのは宗教だと考えた。
 そこで王国は〈宗教オリンピック〉の開催を決定する。各宗教の代表者を招集し、宗教の説明および討論してもらう。王はその中の最も優れた宗教を国教にしようと考えた。参加する宗教はユダヤ教、キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教、仏教そして無神論者である。
 各宗教の代表者は己の信じる教えを主張し、競い合う。いかに自分の宗教が優れているかを述べ、他の参加者が意見する。王はその討論を聴く中で一つの結論にたどり着く。
 「神が存在するなら、神こそ金メダルに値する唯一の存在である」
 王が良いと感じた宗教はあくまで自分が信仰すべきものだ。国民に押し付けることは間違っている。王は世界中の人々に今回の詳細を掲示し、意見を求めたうえで、〈銀メダル〉を決める第二回を開催しようと決めた。大会が終わった夜、王には王国の風景が美しく光り輝いて見えた。
 この本を初めて読んだのは大学に入学してすぐのことだ。イスラム国の話題で日本社会が騒いでいた時期だったため、なんとなく題名に惹かれて手に取った。宗教がなぜあれ程信仰されているのか。私はニュースなどで宗教関連の事件が報道されるたびに疑問に思ってきた。その答えが文中にある。文中では宗教を信仰している人が他宗教の意見に惑わされないことに対して、無神論者は動揺し感情的になる場面か処々に見られる。きっと宗教は本来、信者の人生の道しるべとなり、絶対的な安心感を与えるものなのではないかと思う。人生では一寸先は闇であり、どんな大人でも不安はある。だからこそ宗教に依存し、自分の行動を正当化しようとするのではないだろうか。ただ、依存した信者が起こす残忍な行為は、どんな宗教の教えに基づいて行ったものだとしても絶対に許してはならないと思う。
 本書では宗教を説明して討論する、という形を取っているため、宗教の内容、違い、さらに宗教同士の関係性もしるしてある。物語で内容も分かりやすい上に、説明には引用、寓話を取り入れているため宗教の知識も理解しやすい。宗教に興味をもったならば、本書を入門書として読んでもよいかもしれない。

審査員による講評

審査委員 人文学部准教授 寺嶋 健史

宗教という難しいテーマをお伽噺風のフィクションを通してわかりやすく説明したこの本を選んだ評者はセンスがあると思われます。タイトルもそうですが、「宗教オリンピックの開会宣言」を最初に示したことで、どんな内容なのかとても興味をそそられます。また、全体的にわかりやすい文章で、適度な内容紹介に留めることが出来ています。要約だけで終わっていたり、結論も含めて全て紹介してしまっていては、書評とは言えません。
 後半からの宗教に対する評者の感じ方の件をもう少しシンプルにし、訳書と原書のタイトルのギャップや五大宗教に関する巻末資料の存在にも触れていれば、より一層この本を読んでみたいと読者に思わせることが出来ると同時に、宗教について身近に感じてもらうことができると思います。

審査員による全体講評

審査委員長 薬学部教授 牧 純

松山大学図書館書評賞に応募のあった編数は一昨年12編、昨年30編で、今回は26編。まずまずであったといえる。今後とも、最低限30編前後の応募を期待したい。
 今回も審査委員のメンバーが忌憚のない意見交換をしたところ、残念ながら最優秀賞に該当するものは「ない」との結論に達した。慎重審議の結果は、優秀作2編、佳作2編であった。
 応募者の所属学部もさまざまであった。理系からの応募作品もあり、総合大学の教養教育の一端を担う図書館の役割を垣間見る気がする。審議していると、若い世代が比較的気楽に様々な本を読んでいると想像された。その意味でも松山大学図書館の果たす役割が感じられるようで、審査委員会のメンバーのひとりの私も明るい気持ちになる。
 松山大学図書館が主催している「書評の書き方」に関するガイダンスも、図書館の大切な役割であると今回改めて感じる。その理由としては、例えば次の点があげられよう。
 先ずは、書評の執筆にはまだ慣れていない学生たちが、それなりに頑張っているのであろうが、「書いたことは認めるとしても、これでは読書感想文ではないか、書評ではない」と思われるものがまだある。このようなことを可及的に少なくするようなガイダンスがこれからも必須である。また、読んだ本の要約が多くを占めるあまり、本来の論評があまり見られない類のものもまだ見受けられる点だ。当然その逆でなくてはならない。
 さらに、現代社会で著作権の侵害とならないようにとの指導もガイダンスの重要事項である。一段と徹底させてきたせいか、幸いそのような侵害はなかった。
 若い世代が、読書感想文から「書評」という段階を踏みしめる場合、まずは精読の習慣が身についていることが大切な背景となる。現代の世相は、特に若い世代においてはネット検索することはあっても、じっくりと本を読む習慣が薄れているのであろうか。
 時の流れなのかもしれないし、時代はこうなのかもしれない。大切な暗記事項も最小限にとどめようとする。必要あれば、ポケットからスマホを取り出すことで、たちどころに情報が得られる。紙媒体を手にして眼のあたりにしないと実感を伴わない私どもの時代とは隔世の感がある。確かに、スマホやタブレットで本が読める現代ではあるが、それが可能な書物はごく一部のものでしかないことも念頭に置かねばならない。とにかく、スマホと共に本を一冊ぐらい“携帯”して親しむことだ。
 知的思考の骨組み構築の訓練をすべく、読書の習慣を身につけることこそ大切である。一次資料的な原文に接することが少なくなったのは、時代変化であると言い切ってしまえばそれまでであるが、無念さが拭いきれない。読みやすいものを中心に常に読む習慣をつけておいて、時に原典に当たるのがよいと若い世代に望みをつなげたい。
 それには、まずは新聞から。松山大学の図書館は実に数々の新聞がそろっている。そういう新聞を開くと紙面に「書評」欄が現われる。学生諸君は気づいているであろうか、図書館の展示架には近刊図書情報「これから出る本」という小冊子が立てかけてある。新着図書もまとめられて、ブックトラックに置かれている。「ベストセラー」なる展示もある。これらは無理のない現実的な選択肢である。全く読書からかけ離れた生活を送るのは、寂しいだけでなく、断片的な情報に振り舞わされる人生になりかねないと警告したい。
 以上、わずかな雑感を述べたに過ぎないが、最後に要約する。

(1)優れた松山大学図書館の読書環境の真価を再認識すること。
 (2)学生諸君は、日々益々以って読書習慣を涵養すること。
 (3)来年度、是非ともさらに優れた書評を数多く応募してもらうこと。

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