あいさつ
「ルールを決めること」と「それを文字にすること」―法学部で学ぶこと
はじめに―自分と他人とルール
日常生活を送っている場面では「ルール」を「自分で」決める機会はそれほど多くないと思います。「ルール」は予め決まっていることの方が多いからです。しかし、自分が「ルールだ」と思うことが他人とは異なることもあります。この場合には「ルール」決定に向けた意見交換を要しますが、意見交換には、自分軸(自分の行動指針)が必要です。逆に、意見交換に耐える自分軸を確立するためには、それを支える行動指針が社会の変遷を乗り越えて培われなければなりません(歴史的蓄積を背景とした行動指針)。さらに、現在は、「変化」が当然の社会です。そのような社会では、一旦決まった「ルール」がなし崩し的に変質することを避けるため、「文字にする」ことが必要になります。それゆえ「ルールを決める」能力と「それを文字にする」能力は、今まで以上に重要となります。
松山大学の歴史―100年の蓄積
松山大学(以下「本学」という)には、社会の変遷を乗り越えて培われた強靭な行動指針(校訓「三実」)がありますが、これを説明する前に、まず、本学の歴史を簡単に紹介します。
本学は、松山高等商業学校(以下「松山高商」という)を起源とします(1923(大正12)年設立)。松山高商は、第5代松山市長・加藤恒忠(雅号「拓川」:外交官・政治家)が地域の要請に基づき(「子規の叔父・加藤拓川展」を開催しました)、その推進に尽力し、松山市長の依頼により新田長次郎(実業家)が、「大学経営には一切かかわらないこと」を条件に、巨額の私財を提供し、初代校長として加藤彰廉(旧制・大阪高等商業学校長)が就任して創立されました(詳細は、「https://www.matsuyama-u.ac.jp/guide/history/sanonjin/」 「https://law.matsuyama-u.ac.jp/goodpractice」を参照)。その後、法学部は、「四国の私立大学で唯一の法学部」として、1988(昭和63)年に設置されました。それゆえ、2023年は、本学にとっては100周年の節目、法学部にとっては35周年の節目です。
校訓「三実」―本学全員の行動指針
本学には、行動指針としての校訓「三実」(「真実」・「実用」・「忠実」)があります。これは、初代校長加藤彰廉が定め、それを第3代校長田中忠夫が具体化して、1940(昭和15)年の生徒要覧に掲載し、全学に周知しましたが、この校訓「三実」は、1945(昭和20)年をはじめ多数の「社会の大転換期」を経てもなお本学の学生・教職員の行動指針として生き続けています。それゆえ、校訓「三実」は、社会の変遷を乗り越えて培われた本学の行動指針を表現するものとなっています(校訓「三実」https://www.matsuyama-u.ac.jp/guide/about/rinen/)。
卒業生の進路―多様な選択肢
本学は、松山高商を起源としている影響もあり、地域社会では「就職に強い大学」と認識されています。これは、諸先輩のご活躍もあり(卒業生は、本学全体で約80,000名(2022(令和4)年度)です)、現在も継続できております。この傾向は、法学部でも同様であり、就職状況(民間)は良好です。また、公務員(国家公務員・地方公務員)となる者も多数おります(学年全体の15%~25%。進路に関しては、法学部オリジナルサイトを参照。2022年度の実績:https://law.matsuyama-u.ac.jp/admissionandcareer/career)。さらに、法科大学院へ進学後、法曹となる者の他(2020(令和2)年、2名が司法試験に合格、2022(令和4)年、弁護士登録)、司法書士、不動産関係士及び社会保険労務士等の「士業」に就き、活躍する者も少なくなくありません。
進学先としては、法科大学院があり、毎年2名程度の学生が進学しております(2023(令和5)年4月には、3名進学)。また、本学大学院法学研究科(2020(令和2)年開設)に進学し、「法律学に関する高度専門職業人」となることを目指す者もおります。
カリキュラム―卒業までの手順
上記のような進路は、ひとえに学生の努力の賜物ですが、法学部としても、学生の選択肢を広げるために教育研究環境を整えております。
1年次生は、憲法Ⅰ(人権)・刑法Ⅰ(総論)・民法Ⅰ(総則)の基本三法を必修科目に、法律学入門・政治学入門を準必修科目として、法制度の基礎や法律学の学修に必要な事項を受講でき、2年次生以降は、学生の希望する進路に応じたリーガル・マインドを涵養できるように①司法コース②法律総合コース③公共政策コースのいずれかを選択できます(法学・政治学を順次的・体系的な学べるカリキュラムの設定)。また、3コースのいずれに属していても、学生は、判例読解(判例の読解能力向上を目的とした科目)、論文作法(法学・政治学の作法に従った執筆能力向上を目的とした科目)を履修できます。さらに、意見交換を中心とする演習科目(1年次~4年次)では、教員と学生の距離が近く、3・4年次の専門演習は、必修科目となっておりますので、学生は、卒業後の進路にもつながる支援を指導教授から継続的に受けることができる環境にもなっています(「ルールを決め、それを文字にする」能力の涵養)。
おわりに―卒業:社会人の出発点
法学部生は、校訓「三実」(行動指針)が充満する中で生活し、他人との意見交換に必要な「自分軸」が確立した人格(自分)となって、法学部を卒業し、次のステージに立つことを期待しています。
法学部長 明照 博章
- 電話
- 089-926-7137